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トスカーナの糸杉と救急車

奥村千穂|イタリア

セカンドステージに入ったイタリアの新型肺炎コロナ状況

ローマのトレヴィの泉と警察官(Em Campos-iStock)

セカンドステージに入ったイタリアの新型肺炎コロナ状況

イタリアでは、8月末にヴァカンスが終わり、9月半ばに全国の学校が6か月ぶりに再開しました。3月から5月まで続いたロックダウンのお陰で減少傾向にあった日次感染者増加数は、8月のヴァカンスによる人の移動で増加傾向に戻ってしまいました。

9月半ばに全ての学校が再開してから2週間後には、各地で小規模のクラスターが多発し、現在のイタリア全国の新規感染者数は一日あたり6000人(2020年10月14日の新規感染者数は7332人)を超えています。フランスやスペインに比べると、同じヨーロッパでもまだ少ないのですが、数だけで見ると新規感染者数は3月末と同じレベルです。但し、感染者の多くは無症状感染者、もしくは入院の必要がない軽い症状の感染者で、その殆どが、教師や公務員を対象にしたスクリーニング、濃厚接触者の追跡、駅や港でのPCR検査によって判明したケース。イタリアでは、10月10日に過去最多の13万3084件のPCR検査が行われ、毎日平均10万件以上の検査が行われています。保健所や病院によるPCR検査の他に、有料であれば一般のクリニックでの検査も受けやすくなったことが検査数の増加に影響し、無症状感染者の割り出しに役立っています。

とはいえ、感染のスピードがここ2週間ほどで増えおり、徐々に、各州の病院のコロナによる病床利用率、救急搬送件数が増えています。カンパーニア州やシチリア州など、既にICUの病床が埋まりつつある州もあり、イタリアは新たなフェーズに入ったと言えるでしょう。

このタイミングで、10月13日の深夜に新たな首相令が発令されました。

セカンドステージの新たな規制は再ロックダウンを避けるため

増加する感染スピードをうけて、「再度イタリア全体でロックダウンが行われるのでは?」「州間の移動が規制されるのでは」「一部の州のみのミニロックダウン?」という憶測が飛び交いました。13日の深夜にコンテ首相が発表した首相令は、ロックダウンはなく、しかし感染拡大防止のために、今までよりも厳しい制限処置を講じたものです。

・自宅以外の場所では、屋外でも屋内でも常にマスクを着用すること。マスクを着用していない場合、400ユーロ~最高1000ユーロの罰金が課せられます

・アマチュアレベルの、サッカーやバスケットボールなど接触を伴うスポーツの禁止

・劇場、コンサートホール、映画館の観客数は、屋外は最大1000人まで、屋内は200人までとする

・屋内外にかかわらず、あらゆるパーティの禁止。自宅に同居者以外の人を呼ぶ場合は6名以下とする。結婚式や葬式などの宗教行事は参列者30名まで

・修学旅行、ガイドツアー、遠足など教育目的の外出の禁止

・あらゆる飲食業の営業はテーブルでの飲食に限り24時まで、着席しない飲食は21時までとする

アマチュアスポーツの間や、深夜のパブ、個人宅でのパーティなど、実際に発生したクラスターの発生場所に基づいて、講じられた規制であることがうかがえます。

現在のコロナ救急搬送状況

私が所属する救急センターでも、少しずつコロナ出動が増えてきています。ただ、出動数がトスカーナでの感染がピークだった4月ほどではないのは、恐らく、現在の罹患者の殆どが20代から40代と体力のある年齢層であるため、重症化せずに自宅療養で対応できる軽症だからでしょう。

今朝、私が搬送した30代の男性は、もともと呼吸系の疾患があり、1週間熱が下がらず、PCR検査を受けて陽性が判明、ホームドクターから肺のレントゲンを勧められ、救急要請を行ったそうです。軽症者も救急搬送にアクセスできる今の状況が患者の重症化を防いでいます。救急要請の数が増え、軽症者のフォローが間に合わなくなると、患者は自宅で重症化し、病院搬送の手遅れから重症化、死亡者の増加という悪循環になるため、何としてでも感染者の増加を防がなくてはいけません。今の所はまだ医療機関の受け入れ態勢も整っており、ICUもコロナ病棟もまだ十分に空きがありますが、感染者の増加数に比例して、コロナによる救急出動要請、ERへのアクセスが増えるので、予断を許さない状況です。

今年の冬休みは国外に旅行に出かけることは確実に不可能。せめて、クリスマスランチを家族、親せきと一緒に囲めるかどうか・・・。今日のツイッターのトレンドには、#Lockdown2という言葉があがっていました。

イタリア人にとって、これからの4週間が重要な局面になることでしょう。

 

Profile

著者プロフィール
奥村千穂

イタリア、フィレンツェ在住歴22年。滞在型アパートメントの紹介サイト「ラ・カーサ・ミーア」を運営。イタリア語現地医療通訳。2019年より地元救急センターの救急車ボランティアに参加。近著『美しいフィレンツェとトスカーナの小さな街へ』(旅のヒントブック)。

ブログ:フィレンツェ田舎生活便り

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