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平野美紀|オーストラリア

シドニーのシンボル、ハーバーブリッジ90周年!もし違うデザインが選ばれていたら...3Dアニメで再現

シドニーのシンボルのひとつ、ハーバーブリッジ。毎年、冬に開催される「ビビッド・シドニー」では、カラフルに彩られた橋を見ることができる。(Credit:zetter-iStock)

『世界三大美港』のひとつ、シドニー湾の風景をより一層美しく魅力的なものにしているシドニー・ハーバーブリッジ。その形状から「コート・ハンガー」の愛称で呼ばれ、オペラハウスと並ぶ、シドニーの街のシンボルとして、市民からも観光客からも愛されている。

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対岸のキリビリから眺めるシドニー湾の夜景。オペラハウスとハーバーブリッジという、これぞ「The Sydney」の絶景が広がる。(Credit:AzmanJaka-iStock)

そのハーバーブリッジが、先週の土曜日、3月19日で90周年を迎えた。

すっかりシドニーの顔として定着しているアーチ型の橋だが、もしかしたら、まったく異なるデザインになっていたかもしれないという。違う橋が架かっていたら、どんな景色だったのだろうか?

シドニー・ハーバーブリッジの概要

建設の様子などを収めた開通後間もない頃の貴重なビデオ。1933年制作。(NFSA Films)

シドニー湾(正式名称:ポートジャクソン湾)に架けられたシドニー・ハーバーブリッジは、1932年3月19日に開通した。今日(こんにち)も変わらず、シドニー中心部と湾の北側のノース・シドニーを結ぶ主要ルートとなっている。

1923年7月に着工したが、建設当時から橋の上にレールを敷き、路面電車と車輛が通行できるよう設計。全長1,149 メートル、幅が48.8メートルを誇る、世界最大の鉄鋼製アーチ橋だ。2012年前半までは、世界一車線の多い橋としても知られ(*)、8レーンの車道と鉄道用線路、歩道が設けられている。現在の鉄道用線路は、路面電車用だった部分を転用したもので、8レーンある車道は、通勤時間帯の中心部への出入りに合わせ、上下線の車線数が増減するのも特徴だ。

(*)=2012年9月に開通したカナダのポートマンブリッジが、車線数10レーンとなり、記録を塗り替えられた。

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シドニー中心部から北側へ渡る様子。上りと下りで車線数が変更される際は、上のレーン番号の矢印の色で表示。慣れないとちょっと危険を感じるかもしれない...(筆者撮影)

他に6案あったハーバーブリッジのデザイン

ハーバーブリッジの構想は、1815年には既にあったそうだが、1900年になってようやく政府が、ハーバーブリッジの設計と建設のための組織委員会を設置。世界的なデザイン・コンペを実施したところ、70以上ものデザインが集まったが、そのほとんどが却下されたという。

最終的に、英国の建設会社ドーマン・ロング&コーが請負契約を結び、クイーンズランド州出身のエンジニア、ジョン・ブラッドフィールドの総指揮の下、約8年半の歳月をかけて完成した。これが、現在見られるハーバーブリッジだ。

採用されたデザインに関しては、ドーマン・ロング&コーとブラッドフィールドの間で、お互いが自分のものだと主張したことから揉めたというが、デザイン検討段階の最終案には、全く異なる6つのデザインが候補にあがっていたそうだ。しかも、最有力とされていたのは、今日見られるものではなかったという。

Sydney_Harbour_Bridge_designs_submitted,_1900.gifデザイン検討段階の最終案として残っていた6つのハーバーブリッジのデザイン案。(Australian Copyright Council (ACC) by PD)

もし、ハーバーブリッジが今のようなアーチ型でなかったら・・・一体、どんなシドニー湾の風景が広がっていたのだろうか?

そんな好奇心を抱いたシドニーの映像制作会社が、これら6つの歴史に埋もれてしまったハーバーブリッジを美しい3Dアニメーションで蘇らせた。あたかも現実にそこにあるかのような、今とは異なるシドニー湾の風景を眺めながら、ハーバーブリッジの歴史に思いを馳せてみるのも、なかなかオツなものだ。

歴史に埋もれてしまった6つのハーバーブリッジをデザイン案を基に3Dアニメーションで再現。(Arterra Interactive)

ハーバーブリッジは、建設に当たり、そのほとんどの資材を北半球から取り寄せたりしたことから、建設にかかった総額は、当初の予定額の約3.5倍に膨れ上がり、当時の金額で1,000万豪ポンドを超えたという。これは、日本円に換算すると60憶円以上にも上るともいい(旧通貨単位で換算レートが不明確なため、厳密にはよくわからない)、1988年にようやく完済したそうだ。こんなエピソードからも、途方もないプロジェクトであったことが容易に想像できる。(参照1, 2

巨額の費用と年月をかけて建設されたシドニーのシンボル、ハーバーブリッジ。もしかしたら、別のシドニー湾の風景があったかもしれない...そう考えると、ちょっとワクワクするが、やはり、優美なアーチを描く今の橋が一番しっくりくるように思うのは、私だけだろうか... 〈了〉

 

Profile

著者プロフィール
平野美紀

6年半暮らしたロンドンからシドニーへ移住。在英時代より雑誌への執筆を開始し、渡豪後は旅行を中心にジャーナリスト/ライターとして各種メディアへの執筆及びラジオやテレビへレポート出演する傍ら、情報サイト「オーストラリア NOW!」 の運営や取材撮影メディアコーディネーターもこなす。豪野生動物関連資格保有。在豪23年目。

Twitter:@mikihirano

個人ブログ On Time:http://tabimag.com/blog/

メディアコーディネーター・ブログ:https://waveplanning.net/category/blog/

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