World Voice

サッカーを食べ、サッカーを飲み、サッカーと寝る国より

古庄亨|ブラジル

2020年、大晦日のサンパウロにて

istock-サンパウロ

◉全てを変えてしまったウイルス

2020年が終わろうとしている。

世界中がCovid-19というウイルスに翻弄された。

これまでの生活習慣、文化的行動やスタイルが根底から覆された。

永遠に変わらないだろうと思われていた事を一気に変えてしまった。

それはここブラジルでも同じである。

南米は特に挨拶時に強烈な抱擁(ハグ)がある。

強く抱きしめるだけでなく、頰と頰を合わせる動作もある。

多少ソフトな挨拶な場合でもガッチリと握手を行う。

この風物詩の様な習慣はなくなり、挨拶があっても拳を合わせる程度である。

熱い抱擁自体は、筆者はブラジルに何年いても慣れないのだが、ブラジル人同士の挨拶を見ていてやはり寂しく感じてしまう。

マスク着用の習慣もそうである。

コロナ禍前はブラジルでマスクをしている人は皆無であり、マスク=重病というイメージであった。

実際に他国でコロナウイルス感染拡大のニュースが流れ始めた頃、予防の為にマスクをしたかったのが本音だったが、勘違いした人に襲われない為に外していた。

アジアからの感染拡大のニュースが流れ、ブラジル国内でも少しづつ広がっていた時期であった為、アジア系に対しての暴言や暴力が海外で起こり始めた頃である。

アジア人のマスク姿=ウイルス感染者扱いとなり、身の危険を感じており、護身の為の判断だった。

生活面でも、エレベーターを別にしてくれとオーナーに頼む人がいたり、

マンションの共有スペースで子供達だけで遊んでいると怒鳴り込んで来られた事もあったと聞いている。

実際はブラジルへのウイルス感染は、ヨーロッパから持ち込まれたモノである。

この誤解は解けており、大部分に人には認知されている。(極稀にコロナ関連でアジア人に対しての事で暴言を投げかけられる事はある)

それが今やどこもかしこもマスクだらけ。

着用の義務化は勿論、罰則・罰金である。

街中のバールやレストランも入口での体温チェックや消毒、入店人数の確保は勿論、壁や天井を打ち抜いて開閉式に変えた所も多い。

筆者個人レベルでいうと、アパートに帰ってくると、各部屋の前に靴が並べられているの見掛ける様になった。

基本的に土足で部屋の中に入る国だったのにだ。

今年は年末のカウントダウンも中止になり、サッカーと並ぶブラジルの代名詞、カーニバルも中止になった地域や延期にした地域もある。

変わりに人気があるのが、自然豊かな地域で家族や親しい友人だけで静かに過ごす年末年始や長期休暇である。

何十年、何百年というスタイルや文化的思想、習慣を一気に無にしてしまった。

優先順位を変えてしまった、いや何か大事な事を考えさせる為のメッセージなのだろうか。

iStock-Brasil_covid19.jpeg

◉2021年は落ち着くのか...。

一旦は新規感染者が減少傾向にあったブラジルだが、11月以降少しずつ増加傾向にあり、第2波到来かとも言われている。

中国からのワクチン導入など積極的、効果的な対応を取ろうとしている政府だが、

今後はどうなるのだろうか。

以下は、12月22日(火)に在サンパウロ総領事館から在ブラジル日本人向けに発表されたメッセージである。

(メッセージ)

12月22日(火)、サンパウロ州政府は今年のクリスマス及び年末年始に向けた、サンパウロ州経済活動計画(Plano SP)を発表しました。

 新たな計画では、現在、サンパウロ州内全域でフェーズ3/黄色(緩和段階)(ただし、プレジデンチ・プルデンチ市はフェーズ1/赤)となっていますが、本年12月25日、26日及び27日の期間と明年1月1日、2日及び3日の期間の計6日間については、暫定的にフェーズ1/赤(最大限の警戒)とすることとされました。

 当該フェーズ1となる期間においては、商店、オフィス、レストラン、バーやその他文化施設などが対面での営業は禁止されます。他方、薬局、パン屋、スーパー、ガソリンスタンド、ホテルなど生活に欠かせないサービスの営業は認められます。

 また、合わせて、明年1月4日に予定されていたフェーズの見直しは、1月7日に変更されたことが発表されました。

(以上)

規制の延長につぐ延長。

繰り返される、フェーズの前身と後退。

コロナ禍当初は、いつ収束するかという論争が目立ったが、この論点はもう無意味なモノになっている。

どう共存していくか、どう生活様式、スタイル、考え方を変えていくのか。

在ブラジル日本人社会に目を向けてみる。

4月に入学した子供達。

学校に行けたのは12月までに学校に行けたのは、1回であった。

それも12月である。

内容は2時間ほどで対面授業ではなく、課外活動のみ。

とても嬉しかっただろう。

一度も行った事がない学校、一度も会った事がない担任の先生やお友達。

少しの時間とはいえ幸せな時間だったであろう。

関係者や保護者の努力の甲斐あっての時間である。

しかし、1月からの予定は各学年2回程度の限定的な登校予定。

2月はカーニバル休暇等もあり、祝日が多いブラジル。

気づけば3月である。

年間5回も学校に行けないかもしれない今年度。

コロナ禍だったから仕方がないと捉えるか、コロナ共生時代のスタートだと捉えて新しいスタイルへ転向するきっかけとするのか。

少なくとも日本はまだ学校が開校されており、子ども達の事を考えて日本へ戻るという決断をされる帯同家族もいらっしゃるだろう。

オンラインだけでは習得できないモノが実社会や学校にはある。

大事なモノを学ぶ機会を失った2020年。

2021年は取り返すのでなく、新しいモノを産み出していこう。

ブラジルは日本から12時間遅れての年明けです。

みなさま良いお年を!

 

Profile

著者プロフィール
古庄亨

ブラジル・サンパウロ在住。日本・ブラジル・タイの3ヶ国で、2010年までフットサル選手としてプレー。2011年より5年間、都内スポーツマネージメント会社勤務。2016年ブラジルに渡り翌年現地にて起業。サッカーを中心にスポーツ・教育関連事業で活動中。

Webサイト: アレグリアスポーツアカデミー・サンパウロ

Twitter: @toru_furusho

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