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NYで生きる!ワーキングマザーの視点

ベイリー弘恵|アメリカ

マウントサイナイ医科大学で薬物依存の研究を続ける石川さん

©iStock

前回につづき、現在マウントサイナイ医科大学で神経科学の研究を続けている石川真砂(いしかわまさご)さんの研究や二人の娘さんを育てるシングルファーザーとしての生活についてお話をうかがった。

──具体的に、どういう研究をされているのですか?

「電気生理学的手法を用いて、脳の神経細胞の活動について調べています。ネズミの脳を取り出して、うすいスライスにすると、顕微鏡下で神経細胞を見ることが出来ます。その中のひとつの神経細胞にガラスで作った電極をくっつけて、細胞の電気的な変化を機械で測定しています。

我々の細胞内にはナトリウム、カルシウム、カリウム、クロライドといったイオンがあるのですが、それらのイオンが細胞内外を行き来する際に電気的な変化が生じるわけです。もちろん脳をスライスすると、長い時間保存は出来ないので、時間との勝負で、休みなしで実験をします。

我々の研究室では主に薬物依存の研究をしていますが、依存になった動物では、それらの電気的変化が大きかったり小さかったりすることがあり、その現象が薬物依存の原因となることがあります。もちろん僕がやっている電気生理学的の解析の他に、行動解析、画像解析、遺伝子解析など様々な観点からの研究を15名程のスタッフで協力しあいながらやっています。

薬物を含めた依存症は、未だに分からないことが多く、確定的な治療法が無いのが現状です。また治療法が無い上に、ここアメリカではタバコ、コカインを含めた薬物依存が大きな社会問題になっています。脳を含め身体全体がどのように変わると依存になるのか、今後研究が進んで詳細な機序が分かってくれば治療も可能になるのではと思っています。

研究をやっていて楽しいし、面白いです。現場で実験をしていると、誰も見たことがないような現象を誰よりも先に一番に見れるので。新しい発見があったりすると、それを何回も繰り返して、正しいということを証明したら論文として発表します。時には自分の実験以外に学生へのアドバイス、指導もします。ただ、いつも実験が上手く行くということは稀で、良いデータが取れないことの方が多く、ストレスが溜まることもあります。新しい発見が無ければ論文は書けないですし、研究費も取れないので。パンデミック前くらいから、良いデータがでなくて欝になったこともあります。

──依存に関してなにかアドバイスはありますか?

「薬(ドラッグ)には手を出さないほうがいいですね」

──実際に研究と家事・育児の両立は大変だったでしょうね。苦労したことはありますか?

「妻がガンで亡くなったとき、娘は8歳と6歳でした。妻が病気になるまで料理をしたことがなかったので、家事はゼロからのスタートでした。子供の学校関係や、税金、日常生活に必要なこともすべて妻がやっていたので、全て自分でやらなければならなかったは辛かったです。

今の研究室ではある程度自分で勤務時間を調節できるので、集中して3週間やって、3日間休んだりすることもあります上司にも恵まれて、僕の家庭状況を理解してもらえてるので、子供の学校から連絡があったりすると嫌な顔せず早退させてくれたりします。

大変だったのは、娘たちの思春期。薬局に生理用品を買いに行きましたが、店員さんにどれを買ったらよいか聞いたこともありました。妻はいつも子供たちにお弁当を持たせていたので、僕も学校給食ではなく毎日お弁当を持たせています。

ロックダウンの時に痛風発作がおこり身動きがとれなくなり、妻も居ないので薬も取りに行けず大変な思いをしました。友人に薬の引き取りをお願いしたのですが、パンデミックが始まった直後だったこともあり、友人も怖いから外に出たくないという感じで非常に困りました。

医師に処方された痛み止めが麻薬系の薬だったので、薬局に宅配サービスもやってもらえず、
結局、上司ケニー教授にお願いしました。その時もケニー教授はひとつ返事で了解してくれて命を救ってもらいました。ひとりで全てをこなさなければならないので、自分が病気もしくは怪我をした時が一番辛いです」

──最後に苦難を乗り越えてでもアメリカで暮らす理由について

僕は20代前半にアメリカで働きたいという夢を持ちました。そして人生半ばの40歳手前でアメリカに来ました。そのあと様々な挫折、苦労はありましたが、今は楽しく生きています。人生、夢を持って努力を続けていれば、夢は実現しなくても夢に近づくことは出来ると思います」

※1電気生理学(でんきせいりがく)とは、神経筋肉心臓やその他の組織または細胞電気的性質と生理機能との関係を解明する生理学の一部門、またはそれに用いられる実験技術である。特に神経生理学は電気生理学的研究が中心であり、また現代ではイオンチャネル受容体など分子レベルの研究が進められている。(ウィキペディアより)

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【プロフィール】
石川真砂(いしかわまさご)
1992
年、昭和薬科大学、修士課程修了。1992年より2006年までエスエス製薬、中央研究所勤務。20004月から翌年7月までワシントン州立大学、薬学部にて客員研究員となる。2006昭和薬科大学にて博士号(薬学)取得2007年より2012年まで、ワシントン州立大学、獣医学部にて博士研究員を経てリサーチ助教授として勤務2012年からピッツバーグ大学で研究員として勤務後2014年より助教授としてマウントサイナイ医科大学に所属20211月より現在、マウントサイナイ医科大学、神経科学科の准教授として研究を続ける。

 

Profile

著者プロフィール
ベイリー弘恵

NY移住後にITの仕事につきアメリカ永住権を取得。趣味として始めたホームページ「ハーレム日記」が人気となり出版、ITサポートの仕事を続けながら、ライターとして日本の雑誌や新聞、ウェブほか、メディアにも投稿。NY1page.com LLC代表としてNYで活躍する日本人アーティストをサポートするためのサイトを運営している。

NY在住の日本人エンターテイナーを応援するサイト:NY1page.com

ブログ:NYで生きる!ベイリー弘恵の爆笑コラム

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