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NYで生きる!ワーキングマザーの視点

ベイリー弘恵|アメリカ

新型コロナウイルスがパラサイトって?NYU山野教授に聞く!

まず、免疫には大まかに[自然免疫]と[獲得免疫]の二種類があります。たとえばヒロエ(当サイト、ブロガーの名前)というウイルスがいたとしましょう。第一段階で、自然免疫という非特異的攻撃方法でヒロエウイルスに対処します。もしも、この自然免疫をすり抜けた場合には、第二段階の獲得免疫というさらに精密な防御機構で対処します。

この獲得免疫は、ヒロエウイルスを認識して、ヒロエウイルスだけを攻撃する防御機構を作り出します。そのうちの一つが、抗体といわれるタンパクです。免疫細胞によってヒロエウイルスにだけくっつく抗体が作られて、抗体とくっついたヒロエウイルスは、次の細胞に感染できなくなります。そのうちに自滅し、貪食細胞というブルトーザーに片付けられるように、ウイルスはなくなってしまいます。

前述のようにウイルス粒子はとても小さいのですが、免疫細胞のウイルス認識領域はさらに小さいものなのです。分かりやすくいうと、免疫細胞はヒロエウイルスの体全体を認識しているのではなく、目、眉毛、アクセサリー、髪、爪、などと細分化して情報を認識して、それぞれを特異的に攻撃します。

つまり、抗体などもそれぞれの細分化された小さい領域にくっつきに認識し、次にヒロエウイルスが入ってきたときには、眉毛担当の抗体が眉毛部分にくっつくとか、爪担当の抗体が爪部分にくっつくといったように、抗体はウイルス自体をもっと細分化して防御します。

さらに大まかに免疫は二種類といいましたが、狭義的にはとてつもない数の免疫細胞(白血球の一種で、マクロファージ・樹状細胞・T細胞・B細胞・NK細胞・形質細胞など)とそれらのシステムが存在します。それぞれの細胞が、防御のために様々な装備を備えているのです。

現実に例えていうなら、弓矢、拳銃、手榴弾、機関銃、散弾銃、さらにマシンガンまで持っているような感じです(笑)。それが免疫という防御システムです。自然免疫はとりあえず非特異的にどんなウイルスにも対処してランダムに処理するためのシステムで、獲得免疫はヒロエウイルスと特定したカスタマイズに処理するシステムなのです。

感染するというのは、以上の厳重な免疫システムをすり抜けて、細胞に入ってくることです。ウイルスも命がけで入ってくるのです。ウイルス感染は、とてつもない数のウイルスが入ってきて防御をかいくぐって細胞に寄生する。

精子が卵子と受精してさらに子宮に着床するのを想像していただくと、似ているかもしれませんね(精子は1度に2〜4億個放たれ、2〜3日の寿命の間に卵子にたどり着く必要がある)。つまり、ウイルスの生体内侵入≠感染だということですね。

さらに免疫の凄いところは、例えウイルスが細胞に感染してしまった場合は、その感染細胞が感染してしまったよという目印の旗を細胞の上に出します。そこに免疫細胞がやってきて、感染細胞ごと殺します。それで、ウイルスも感染細胞も死滅します。」

──なるほど。免疫って、とても精密で壮大な生体防御システムなんですね。お話を聞いていて思ったのは、現実に例えていうならば、免疫細胞は日本の戦時中にいた特攻隊みたいなものかもしれないですね。

「そうとも言えますね。あと、ウイルスの興味深い特徴の一つに、多くのウイルスは感染している間はウイルス自体が宿主細胞を直接攻撃して死滅させないことが挙げられます。例えば、ウイルス性肝炎というのは、肝炎ウイルス自体が肝臓を破壊して炎症を起こしているのではありません。寄生しているうちに感染細胞を殺してしまうと自分が生き残れないからです。

ではなぜ炎症が起きるのかというと、前述のようにウイルスを含む感染細胞を見つけて、それらの細胞ごと免疫細胞がやっつけて殺すからなのです。

さらには、ウイルスには特異的に結合できる受容体(レセプター)※1というものがあって、それは細胞にある鍵と鍵穴みたいなもので、新型コロナウイルスはACE2受容体を持っている細胞にしか感染しません。そもそも、ウイルスはどんな細胞にでも感染できるわけでなくて、このウイルス特異の受容体を発現している細胞のみに感染できるのです。

以上のようにウイルス感染と免疫という概念が分かっていれば、気をつけるポイントが絞れると思います。」

※1 受容体(レセプター)とは・・・生物の体にあって、外界や体内からの何らかの刺激を受け取り、情報(感覚)として利用できるように変換する仕組みを持った構造のこと。(ウィキペディアより)

お話の続きは、後編にてお届けいたします。7月中旬ごろにアップする予定です。

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©NY1page.com LLC  NYミッドタウンにある某日系レストランにて取材いたしました。
           山野教授(左)とHiroe(右)

【プロフィール】
山野精一(やまのせいいち)

90年日本大学歯学部卒業、94年東京医科大学大学院修了・医学博士取得後、同大学助手口腔外科。97年からメリーランド州にある全米最大の医学研究機関NIH(国立衛生研究所で基礎医学研究唾液腺による遺伝子治療に4年半従事後、04年ペンシルベニア大学歯学部卒業・歯学博士と米国歯科医師免許取得、07年ハーバード大学歯学部大学院卒業・医科学修士と補綴専門医取得。07年よりニューヨーク大学歯学部助教授補綴科16年よりニューヨーク大学歯学部准教授(補綴科)。

 

Profile

著者プロフィール
ベイリー弘恵

NY移住後にITの仕事につきアメリカ永住権を取得。趣味として始めたホームページ「ハーレム日記」が人気となり出版、ITサポートの仕事を続けながら、ライターとして日本の雑誌や新聞、ウェブほか、メディアにも投稿。NY1page.com LLC代表としてNYで活躍する日本人アーティストをサポートするためのサイトを運営している。

NY在住の日本人エンターテイナーを応援するサイト:NY1page.com

ブログ:NYで生きる!ベイリー弘恵の爆笑コラム

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