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英王室

ヘンリー夫妻の安全に責任を持つべきは誰なのか?

“They Must Pay,” Says Trump

2020年04月16日(木)16時25分
ジャック・ロイストン

幼い息子と共にLAで暮らし始めた2人だが、一家の安全が危ぶまれる HENRY NICHOLLSーREUTERS

<ロサンゼルスで新生活を始めた2人。トランプが警護を拒否するなか、どうやって身を守る?>

3月31日に英王室を離脱したヘンリー王子とメーガン妃。その安全を誰が守るべきかという議論が起きている。

ヘンリー王子夫妻がカナダからロサンゼルスに移住したとの報を受け、ドナルド・トランプ米大統領はシークレットサービスを2人の護衛に充てるつもりはないとして、警護費用は「自分たちが負担すべきだ」とツイートした。

これまで夫妻に警護を提供してきたカナダ政府も2人の立場が変わった以上、今後は費用を負担しないと明言している。イギリスの世論も、王室の公務を退き、外国に移住した夫妻の警護に税金を使うことには批判的だ。

夫妻もアメリカ政府に警護を頼もうという考えはないらしく、広報担当を通じて「個人負担で警護体制を整えた」と発表した。

ロンドン警視庁時代にヘンリーの母親であるダイアナ元妃の警護に当たったケン・ウォーフは、王室メンバーの警護には英情報機関との連携が不可欠だと本誌に語る。「ロサンゼルスの事情を知る民間の護衛チームを雇うにしても、米国務省は彼らに情報を提供しないだろう」

妥協策としてロンドン警視庁が連絡担当を置き、夫妻が雇った民間チームに情報を提供する方法が考えられる。ウォーフによれば、アンドルー王子の娘で、公務を行っていないビアトリス王女とユジーニー王女は自己負担で、王室メンバーの護衛に当たったロンドン警視庁の元警官を警護に雇っているという。

2018年にヘンリーとメーガンに白い粉と人種差別的な手紙が送り付けられたように、夫妻には犯罪の標的になる危険が常に付きまとう。さらに、夫妻の幼い息子アーチーが誘拐されないよう絶えず目を光らせる必要もあると、ウォーフは言う。

ダイアナの死を教訓に

新型コロナウイルスの感染拡大が収束し、夫妻が公の場に姿を見せるようになれば、パパラッチに追い回されるのは確実だ。

民間の警備会社は元兵士を雇うことが多いが、軍隊で身に付けたノウハウは王室メンバーの警護には役立たないどころか、かえって邪魔になると、ウォーフは警告する。彼に言わせれば、ダイアナが死亡した事故では、パパラッチを出し抜こうと護衛チームが立てた作戦が裏目に出た。

作戦では、普段ダイアナの送迎をしている運転手がホテルから車を出し、パパラッチをおびき寄せるはずだったが、そうはいかなかった。事故時にダイアナの乗った車を運転していたのはホテルの警備員で、通常の業務を終えた後、車に乗る前にバーで飲んでいた。裁判ではダイアナの事故死は運転手の飲酒とパパラッチの追跡が原因とされた。

ウォーフは王室メンバーの警護には特殊なノウハウが必要だと力説し、ヘンリーを幼い頃からずっと守ってきた警備体制をいきなり打ち切ることに警鐘を鳴らす。

トランプは「(エリザベス)女王といイギリスの大いなる賛美者」を自称しつつ、「アメリカは(夫妻の)警護費用を持たない」と突き放した。

トランプに言われるまでもなく、夫妻は自前でボディーガードを雇う考えだが、ロンドン警視庁か英内務省が情報提供で支援するだろうか。チャールズ皇太子が負担するとの報道もあり、やはり完全に関係を断つことにはならないようだ。


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