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自己主張を守るという名の放任子育てが増殖中! 子どもの自己主張と自我主張の見極めと対処法

2019年12月10日(火)17時10分
船津徹

しつけの目的はルールに服従させることではない

子どもをモノで釣ろうという衝動が最初に起こるのが「社会性のしつけ」が必要になる時期(2歳〜5歳くらい)です。子どもの行動範囲が家庭の外へと広がると、社会のルールや集団での行動規範を身につけさせなければなりません。いわゆる社会性のしつけが必要になります。

病院で子どもが走り回っています。持て余した親が「今静かにしてくれれば後でおもちゃ買ってあげる」と「切り札」を使いたくなる気持は十分に理解できます。でもそんなときは、次のように考えてほしいのです。

子どもが社会性を身につけるチャンス!

社会や集団のルールを教える「しつけ」には、子どもを服従させる、型にはめ込む、というマイナスのイメージが伴います。しかし、しつけ本来の目的は「人生を快適にする知恵」を子どもに伝えることです。

「ルールを守りなさい!」と命令するのでなく「どう行動すれば皆が楽しく快適に過ごせるのか?」を考えさせ、子どもが自分の「心の声を聞く」習慣を身につけさせるのがしつけです。無理矢理ルールに従わせることやその場しのぎの行動転換を押しつけることではありませんので混同しないでください。

病院で走る子どもを外に連れ出し、ギューッと抱きしめ、心を落ち着かせます。そして「ママは元気な◯◯ちゃんが大好き。でも◯◯ちゃんが具合悪いときにお友だちがまわりで騒いでいたらどんな気持になる?」と尋ねてください。これが「心の声を聞く」ということです。

また、子どもを集団社会や新しい環境に連れていくときは、必ず「前もって」どこに行き、何をするのか、また、何をしてはいけないのか、を言葉で説明してあげてください。言葉が未発達だから言っても分からないだろうと思わずに試してみてください。幼い子どもでも理解してくれるはずです。

「今日はママとデパートに行くよ。そこは皆がお買い物をする場所だよ。デパートにはいろんなモノがあるけど勝手に触ってはいけないよ。デパートにはたくさん人がいてあぶないから走らないのがお約束。◯◯ちゃんはお約束守れるかな?」とやさしく聞けば、2〜3歳児でも理解してくれます。子どもが「うん」と言ったら、「ありがとう。ママうれしい!」と言って抱きしめてあげます。

約束したにも関わらず子どもが走り回ったときは「社会性を身につけるチャンス到来」です。「ママとのお約束覚えている?」と質問し、子どもの口から「走っちゃダメ」と言わせるように導いてください。そして「◯◯ちゃんが走ってモノを壊したら、作った人はどう思うかな?」「◯◯ちゃんが走って人にぶつかったら相手の人はどう思うかな?」と尋ねて、子どもが自分の「心の声を聞く」習慣を身につけるように導いていきましょう。

自己主張と自我主張を見極める

今、世界中の親たちが混乱しているのが、自己主張と自我主張(わがまま)の線引きです。この二つがごちゃまぜになっていて、子どもの自己主張を守るという名の放任子育てが横行しています。

自己主張は自分の意思や気持ちを表現するものであり、子どもの「個性」ですから大切にしなければなりません。一方の自我主張も意思表現ですが、周囲への気遣いがありません。またモノへの「所有欲」や「独占欲」が隠れている場合が多いので、それで判断します。

子どもが「おもちゃを買って!」と言い張ります。「おもちゃが欲しい」というのは自己主張ですから認めてあげます。でも「絶対欲しい!」と寝転がって泣きわめくのは、周囲への気遣いがないので、自我主張になります。

このようなときは「◯◯ちゃんはこのおもちゃが好きなのね」と子どもの自己主張は受け入れます。その上で「おもちゃを買うにはお金がいるの。今はお金がないから我慢してね」と伝えます。子どもが「わかった」と言ったら「◯◯ちゃんが分かってくれてママ嬉しい。ありがとう」と抱きしめます。これで子どもは自我を抑制すると「親の愛情」という報酬がもらえることを理解します。

病院で走り回る場合も同様です。思い切り走りたい!というのは子どもの自己主張ですから認めてあげます。しかし病院という場所で走り回るのは周囲への配慮がないので自我主張になります。そのときは前述の例のように「心の声を聞く」ことを教えてあげてください。

子どもがおもちゃの取り合いをしています。同じおもちゃで遊びたいというのは子どもたちの自己主張ですから守ってあげなければなりません。でも同時に「このおもちゃで遊びたいのは分かった。でも少しだけ友だちにも貸してあげたら?/順番に遊べば?」というのが自我(所有欲)を抑えるしつけになります。

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