コラム

バイデン政権初の対面首脳会談、菅総理は訪米前に既に勝利を手にしている

2021年04月02日(金)19時00分

バイデン政権が進める「サプライチェーン見直し」は日本にとっては経済面・安全保障面のメリットが極めて大きい...... Eugene Hoshiko/REUTERS

<日米首脳会談はバイデン外交の試金石として国内外のメディアに大きく注目されることになる。日本側は、日米首脳会談という機会を活かし、更に多くの果実を手に入れることを求めるべきである......>

今月、バイデン政権初の首脳会談が予定されており、その会談相手は日本の菅義偉総理である。そして、世界第1位と第3位の経済大国かつ民主主義国である日米首脳会談が真っ先に設定された時点で、その会談の国際政治上の意味は誰でも理解できるため、菅総理の外交的勝利はほぼ確定したと言って良いだろう。

日米間の経済的な関係の一層強化を提案すべき

そして、日米首脳会談はバイデン外交の試金石として国内外のメディアに大きく注目されることになる。バイデン政権は同盟国重視の外交姿勢を示しており、米国側には日本に対して積極的に友好姿勢を見せる以外に選択肢は存在しない。そのため、同首脳会談は日本にとって極めて有利な政治環境の中で行われると思って良い。菅総理がこのタイミングでバイデン大統領との対面会談を勝ち得ただけで、菅政権の外交交渉能力は極めて高いと言えるだろう。

日本政府が行うべきことは外交面での優位性を更なる勝ち点に繋げていく努力だ。

米国側が日本に対してインド太平洋地域における外交・安全保障面での役割強化を求めることは自明だ。そして、日本側も米国と協力しながら自らの国際的なプレゼンスを高めていくことは既定路線であろう。この点に関しても菅政権は事前に外交課題をクリアしており、首脳会談の前段階で十分な成果を上げる見通しが立っている。

そのため、日本側は、日米首脳会談という機会を活かし、更に多くの果実を手に入れることを求めるべきである。

具体的には、バイデン政権の外交政策及び国内政策を俯瞰し、米国市場における日本企業のシェアを一気に拡大することが望まれる。同盟関係の強化とは盾と矛の関係にあるだけでなく、経済的な実利の大きさによって下支えされるものだ。そのため、バイデン政権が掲げる政策に便乗する形を取り、日米間の経済的な関係を一層強化することを提案するべきだ。

バイデン政権の政策課題は「インフラ投資」と「サプライチェーン見直し」

バイデン政権の優先順位が高い政策課題は「インフラ投資」と「サプライチェーン見直し」である。

バイデン政権は200兆円を超えるインフラ投資を表明しており、その投資内容は現在進行形で調整中となっている。インフラ投資は日本の商品・サービス・ノウハウなどを活用できる分野であり、バイデン政権の意向次第では日本企業にとって巨額のビジネス機会が生まれる。

特にバイデン政権のグリーン・ニューディール政策は高速鉄道などの公共交通機関を重視する傾向があり、日本企業にとってはインフラ産業の輸出が成功すれば多大な利益を得ることができるだろう。実際に目標達成するかはさておき、バイデン政権の関心が高い気候変動対策に中長期的に大いに賛同する仕草を見せて、米国側から巨額受注を引き出すことは交渉上の作戦としてアリである。

日米首脳会談に合わせて、米側のインフラ投資政策のキーパーソンであるブティジェッジ運輸長官や連邦上下両院の公共事業に関する委員会に所属する議員らと日本の経済人との関係強化が実現できると今後の展開に期待が持てるだろう。

プロフィール

渡瀬 裕哉

国際政治アナリスト、早稲田大学招聘研究員
1981年生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。 機関投資家・ヘッジファンド等のプロフェッショナルな投資家向けの米国政治の講師として活躍。日米間のビジネスサポートに取り組み、米国共和党保守派と深い関係を有することからTokyo Tea Partyを創設。全米の保守派指導者が集うFREEPACにおいて日本人初の来賓となった。主な著作は『日本人の知らないトランプ再選のシナリオ』(産学社)、『トランプの黒幕 日本人が知らない共和党保守派の正体』(祥伝社)、『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか』(すばる舎)、『メディアが絶対に知らない2020年の米国と日本』(PHP新書)、『2020年大統領選挙後の世界と日本 ”トランプorバイデン”アメリカの選択』(すばる舎)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

仏エルメス、第1四半期は17%増収 中国好調

ワールド

ロシア凍結資産の利息でウクライナ支援、米提案をG7

ビジネス

北京モーターショー開幕、NEV一色 国内設計のAD

ビジネス

新藤経済財政相、あすの日銀決定会合に出席=内閣府
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story