朝日新聞記事で考えた、五輪風刺イラストの「ストライサンド効果」
一方、大会組織委員会があのイラストを問題視したのはあまりいい決断だと思わない。なにせ相手は各国とつながりのある特派員だ。この場合「ストライサンド効果」をとりわけ懸念すべき。案の定、この騒動はアメリカ、フランスなど各国で報道された。伏せたいはずの「配慮を欠く」イラストが世界に拡散されることになった。
さて、あの表紙に著作権の問題があったかどうか。「争える範囲内」ではないかと推測する。その証拠の1つに、6月27日付の朝日新聞に掲載された、もう1つの五輪エンブレム風刺イラストがある。花模様になっている五輪のマークの花びらが摘み取られているようなデザインだが、これも表現のためにエンブレムをいじっているのではないか。FCCJ会報誌が駄目なら、これも許されないはず。著作権法上で違いがないとなると、デザインが(大会組織委員会にとって)「気に障る」かどうか、が抗議の基準になる。これでは線引きが曖昧過ぎるとしか言えない。
五輪エンブレムのような有意義なものが誕生すれば、メディアはそれに乗っかって何かを表現するもの。格言にあるではないか。「模倣は最も誠実なお世辞」
トニー・ラズロ
TONY LÁSZLÓ
1960年、米ニュージャージー州生まれ。1985年から日本を拠点にジャーナリスト、講師として活動。コミックエッセー『ダーリンは外国人』(小栗左多里&トニー・ラズロ)の主人公。
<2020年8月4日号掲載>
【話題の記事】
・東京五輪「コロナ延期で莫大な経済損失」は本当なのか
・アジア駐在の欧米特派員はセクハラ男だらけ
2020年8月11日/18日号(8月4日発売)は「人生を変えた55冊」特集。「自粛」の夏休みは読書のチャンス。SFから古典、ビジネス書まで、11人が価値観を揺さぶられた5冊を紹介する。加藤シゲアキ/劉慈欣/ROLAND/エディー・ジョーンズ/壇蜜/ウスビ・サコ/中満泉ほか
便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること 2024.04.18
温泉じゃなく銭湯! 外国人も魅了する銭湯という日本の極楽 2024.04.11
「無罪の推定」を無視する日本のマスコミ報道には違和感しかない 2024.04.06
ウォシュレットや炊飯器は「序の口」...ジョージア大使の「最強のおもてなし術」とは? 2024.03.30
株価は最高値更新なのに、日本人の気分は暗すぎる...このギャップをどう考える? 2024.03.17
いま、紹興酒が日本でブーム!(の兆し) 「女児紅」「孔乙己」知ってる? 2024.02.29
26歳の医師が過労自殺した件で、私たちが知らなくてはならないこと 2024.02.17