コラム

公立のバイリンガル小学校がベルリンには18もある、日本にも欲しい!

2020年07月03日(金)16時15分
トニー・ラズロ

INA PLAVANS/ISTOCK

<公立なので低コスト。教育内容は普通の公立校と同じだが、代わり番こでフルに2言語を使う。日本とドイツは違うという意見もあるだろうが、日本にもこんな学校があれば面白い人材が育つのではないだろうか>

新型コロナウイルスのせいで、7月に予定されていた国際言語学オリンピック(IOL)が中止になった(ウイルスの影響を受けているのは、何も東京オリンピックだけじゃないんだぞ!)。これは国際数学オリンピックの姉妹大会で、若者が頭脳を使って競う。例えば、以下のような問題が出てくるかもしれない。

とある言語で横浜をՅոկոհամա と書く。さて、次のうち熊本はどれでしょうか。

① Սապորո
② Կումամոտո
③ կագոշիմա

何が何だか分からないだろうけれど、そう難しい問題ではない。ヒントは、ՅոկոհամաもYokohama もどちらも8文字であること。կ やա を特定できたら先へ進めるかも(正解は本文の最後に)。

僕がIOLに注目していることには、ドイツでの経験が関係している。仕事で約6年間ベルリンに住んだ(『ダーリンは外国人 ベルリンにお引越し』という本も出している)。当然その間、連れて行った息子を小学校に通わせなくてはならない。選択肢として、日本人学校も英語のインターナショナルスクール(いわゆるインター)も普通の現地校もあったが、選んだのは、公立の「バイリンガル校」だった。

ベルリンにはこういうたぐいの小学校が、ドイツ語・英語というコンビネーション以外にも、独仏、独伊、独ロなど、18校もある。2つの教育言語を一定のレベルまで操れる子供が対象だけれど、生徒は合わせて数千人。魅力は公立で低コストであることと、その教育内容だ。普通の公立校と同じ内容だが、代わり番こでフルに2言語を使う。この制度のおかげで、わが子は家で日本語を、学校で英語とドイツ語を使い、これら3言語をそれぞれ伸ばせたし、より一層言語に興味を持つようになった。

さて、日本でこの公立バイリンガル校制度に似たようなことができるだろうか。まず現状を見てみよう。

日本のインターでは東京・調布のアメリカンスクール・イン・ジャパンが最も有名だけれど、年間の学費は280万円弱から。教育言語は英語1つだ。日本の公立小学校は以前より英語を使うようになったとはいえ、教育言語は基本的には日本語1つ。そして、コストの面でこれらの中間にある私立では、日英を中心にバイリンガル教育が試みられ始めた。称賛に値する進歩を遂げているが、ベルリンとの差は大きい。なんせこの街には、独西(スペイン語)で3校、独仏で4校もあるのだから。それも全部公立校だ。

【関連記事】オンライン化のスピード感に欠ける、東京の「生ぬるい」公教育
【関連記事】休校のいま提案したい、新学期は9月始まりにしてみては?

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮、黄海でミサイル発射実験=KCNA

ビジネス

根強いインフレ、金融安定への主要リスク=FRB半期

ビジネス

英インフレ、今後3年間で目標2%に向け推移=ラムス

ビジネス

米国株式市場=S&Pとナスダック下落、ネットフリッ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負ける」と中国政府の公式見解に反する驚きの論考を英誌に寄稿

  • 4

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 5

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 8

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 7

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 8

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 9

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 10

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story