最新記事

北欧

NATO加盟申請で「総点検」...フィンランドが誇る巨大「核シェルター」の充実度

Finns Stock Up on Food, Check Bomb Shelters After NATO Move

2022年5月14日(土)19時22分
イザベル・バン・ブリューゲン
マティンキュラ駅

首都ヘルシンキの地下鉄駅は核シェルターとしても機能するという(マティンキュラ駅) Lev Karavanov-iStock

<政府がNATO加盟の方針を打ち出したことを受け、ロシアと国境を接するフィンランドでは市民の買いだめや防空壕の点検などが急ピッチで進んでいる>

ロシアのウクライナ侵攻を受け、これまで保ってきた「中立」の立場を捨ててNATO加盟申請を方針を示したフィンランド。当然、これにロシアは「報復措置する」と反発し、ロシアとの国境地帯に住む住民たちの間では食料の買いだめやシェルターの点検など「戦争」に備えた動きが起きている。

フィンランドのサウリ・ニーニスト大統領とサンナ・マリン首相はNATO加盟について「遅滞なく申請しなければならない」との声明を出したが、これにロシア外務省は「(ロシア政府は)対応せざるを得ない」と反応。「安全保障上の脅威の発生を阻止するため、軍事技術的の面でもほかの面でも、報復措置を取らざるを得ない」とした。

そのためフィンランドの一部の住民の間では食料の買いだめなど、1000キロメートルを超える国境を接するロシアとの戦争に備えた動きが始まっている。

ロシア国境から約30キロに位置する南カルヤラ県の都市ラッペーンランタのキモ・ヤルバ市長は「多くの人々が72時間分の食料を買い込んでいる。市としては市内の防空壕を点検し、ハイブリッド攻撃の可能性に備えている」と語った。ヤルバが言うには、フィンランド人は恐れてなどいないが、準備はしているということだ。

核シェルターにはサッカー場も完備

プーチンが報復措置として「軍事技術的」な性質のものを選んだ場合、フィンランド人は国内に5万4000以上もある避難所に逃げ込むことになる。フィンランドは世界有数の地下シェルター網を誇っており、合計で440万人を保護することが可能。ヘルシンキだけで5500カ所以上も存在するという。

ヘルシンキの巨大な防空壕には室内サッカー場やスポーツジム、カフェテリア、子供の遊び場など何でもそろっており、核爆発からも人々を守ることができると当局は説明している。また市内の地下鉄は地下深くに位置しており、こちらも有事の際には全市民を収容できる核シェルターとして機能するという。

ロシアによるウクライナ侵攻は、この国の人々に否応なく「自分と家族の備え」について考えさせるきっかけとなった。だが、この国はずっと以前から、「有事」を想定した備えを築いてきていたようだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

EVポールスター、中国以外で生産加速 EU・中国の

ワールド

東南アジア4カ国からの太陽光パネルに米の関税発動要

ビジネス

午前の日経平均は反落、一時700円超安 前日の上げ

ワールド

トルコのロシア産ウラル原油輸入、3月は過去最高=L
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 9

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 10

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中