最新記事

世界の最新医療2021

コロナ禍で持病の治療は延期すべき? 死亡リスクを比較してくれるアプリが登場

THE COVID FACTORS

2021年4月1日(木)20時38分
シーマ・プラサド
来院者を制限する米マサチューセッツ州の病院

全米の病院では来院者を厳しく制限している(マサチューセッツ州の病院) ERIN CLARKーTHE BOSTON GLOBE/GETTY IMAGES

<コロナ感染を恐れて癌などの治療を延期した場合、死亡リスクはどれだけ高まるのか。早期の治療は感染リスクに見合うのか>

新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、癌患者(と医師たち)は深刻な悩みに直面している。感染リスクを考えて、癌の治療を先延ばしにすべきか、予定どおりに始めるべきか──。

この判断にはいくつもの要素が絡んでくるが、患者と医師の話し合いを助けてくれるアプリが登場した。

これはミシガン大学アナーバー校の研究チームが開発したOncCOVIDというアプリ。米国医師会報(JAMA)の癌治療専門誌に掲載された論文によると、患者の基本情報と癌の種類やステージ、そして治療方法などを入力すると、治療を遅らせた場合と、すぐに実行した場合の生存率を算出してくれるという。

「OncCOVIDは、リスクに関して具体的に検討可能な出力結果(治療を特定の期間遅らせた場合、生存期間が何週間あるいは何カ月短くなるかなど)を示してくれるため、医師と患者は治療のタイミングについて話し合いやすくなる」と、論文を批評したJAMAのエディトリアル(巻頭辞)は指摘している。

癌患者が新型コロナに感染しやすいことは、中国で行われた大規模な調査によって明らかになっている。癌そのもの、または化学療法や手術などの治療によって、免疫機能が低下しているためだ。

「さらに、癌患者は新型コロナに感染すると、重症化する可能性が高い」と、中国の研究チームは、2020年に英医学誌ランセットの癌専門誌に掲載された論文で明らかにしている。「従って医師は、患者の症状が急速に悪化する場合に備えて、癌患者にもっと気を配るべきだ」

その上で中国の研究チームは、新型コロナの流行地域では、症状が安定している癌患者については補助放射線療法や選択的手術の延期を検討するべきだと提言している。OncCOVIDは、まさにこうした治療延期が個別のケースで具体的にどのような影響をもたらすかを予測する助けになる。

おおまかな仕組みは次のようなものだ。患者または医師は、ウェブベースのアプリに年齢や性別など患者の基本情報のほか、癌の種類やステージなど最大47項目の関連データを入力する。そこに近隣の病院に入院している新型コロナ患者の数が加えられる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米3月新築住宅販売、8.8%増の69万3000戸 

ビジネス

円が対ユーロで16年ぶり安値、対ドルでも介入ライン

ワールド

米国は強力な加盟国、大統領選の結果問わず=NATO

ビジネス

米総合PMI、4月は50.9に低下=S&Pグローバ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親会社HYBEが監査、ミン・ヒジン代表の辞任を要求

  • 4

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 5

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    ロシア、NATOとの大規模紛争に備えてフィンランド国…

  • 9

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 10

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 8

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 9

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 10

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中