最新記事

投票制限法

黒人の投票を制限する「現代のジム・クロウ法」にコカ・コーラやMLBが反対表明

McConnell: Coca-Cola, MLB 'Quite Stupid' for Opposing Voting Restrictions

2021年4月8日(木)12時24分
ジェイソン・レモン
アトランタを走るコカ・コーラの車

コカ・コーラ社は本拠地であるジョージア州の人種差別的な選挙法改正に反対する声明を出した MoreISO-iStock

<共和党の重鎮ミッチ・マコネルが「企業は政治に口を出すな」と擁護したジョージア州改正選挙法のからくり>

ジョージア州で先月成立した、有権者の投票行動を制限する法律に対し、企業にも反発が広がっている。米大リーグ機構(MLB)やコカ・コーラ、デルタ航空などが反対を表明しており、上院のミッチ・マコネル院内総務(共和党)はこれらの団体や企業を「とても愚かしい」と批判した。

共和党が多数派を占めるジョージア州議会は今年3月、州の選挙法を大きく変更する改正案を可決した。ジョージア州のブライアン・ケンプ知事(共和党)が署名したこの法律は、有権者、とくに民主党支持者が圧倒的な黒人有権者の投票行動を妨害することになると民主党や人権活動家、多くの企業が反対している。テキサス州議会上院でも同じ趣旨の法案が可決されており、共和党主導の州議会は全米で類似の選挙法改正を検討している。

ジョージア州の改正投票法により、有権者の身元確認が厳格化され、不在者投票ができる期間が短くなる。選挙実施当局による不在者投票申請用紙の郵送は禁止され、投票用に街頭に設置される郵便箱の数も減らされる。投票待ちの人々に水と食料を提供することも犯罪になる。黒人有権者の投票を制限するための「現代のジム・クロウ法(投票制限法)」と言われる所以だ。

「激しい論争の的となっている問題の真っただなかに飛び込むのは非常に愚かだ」と、マコネルは4月6日、ケンタッキー州で記者団に語った。企業にも「政治プロセスに参加する権利はある」が、「政治には口を出すべきではない」と警告した。

投票権は神聖なものだ

コカ・コーラとデルタ航空は、ジョージア州の選挙法改正に懸念と反対を表明した。MLBはこの法律が成立したことから、2021年のオールスター戦の開催地をアトランタからデンバーに変更すると発表した。これはジョージア州にとって、数百万ドルもの損失となる。

マコネルの発言に関してコカ・コーラ社は以前の声明を再び引用した。「わが社は本拠地であるジョージア州において最近制定された選挙法に懸念を抱いており、そのことに関する生産的な対話に興味を持つジョージア州の議員と会合を続ける機会を歓迎する」

デルタ航空の広報担当者は、エド・バスティアン最高経営責任者(CEO)からの3月31日の公開メモを引用した。

「私がはっきりさせたいのは、この法案は受け入れがたいものであり、デルタ航空の価値観と一致しないということだ」と、バスティアンは書いている。「投票権は神聖なものだ。それはわれわれの民主主義の基本であり、投票権は保護される必要があるだけでなく、安全で確実な方法で円滑に実行されなければならない」

MLBからの返答はまだない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=ほぼ横ばい、経済指標や企業決算見極め

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、米指標やFRB高官発言受け

ビジネス

ネットフリックス、第1四半期加入者が大幅増 売上高

ビジネス

USスチール買収計画の審査、通常通り実施へ=米NE
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 6

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 9

    ヨルダン王女、イランの無人機5機を撃墜して人類への…

  • 10

    紅麴サプリ問題を「規制緩和」のせいにする大間違い.…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中