最新記事

アメリカ政治

議会突入の「戦犯」は誰なのか? トランプと一族、取り巻きたちの全内幕

The Roots of the Capitol Riot

2021年1月18日(月)16時20分
ビル・パウエル(本誌記者)

ホワイトハウス近くに集まった支持者に議事堂への行進を呼び掛けるトランプ(1月6日) TAYFUN COSKUN-ANADOLU AGENCY/GETTY IMAGES

<ホワイトハウスのスタッフ、選挙陣営の補佐官、トランプ一家の友人らに取材。トランプが不正選挙の糾弾訴訟に失敗し、前代未聞の議事堂占拠を招くうえで鍵となった複数の人物が浮かび上がった>

年が明けて数日間、ドナルド・トランプ米大統領の周囲の人々は、任期の残り2週間を大きな事件もなく乗り切れるようにと、ただ願っていた。

自分たちには「願う」ことしかできないと、選挙陣営の補佐官は本誌に語った。「誰もトランプを制御できないのだから」

そして1月6日、トランプ支持者が暴走して連邦議会議事堂を踏み荒らし、その願いはずたずたになった。

昨年11月の大統領選以降、トランプは選挙結果に恨みを募らせ、ジョー・バイデンの当選の合法性を認めず、2024年の大統領選に再出馬する準備を試みた。その過程で、「選挙結果を覆せるかもしれない」という支持者の信念をたき付けた。

しかし1月6日、選挙結果の確定を前に、彼らの希望は怒りに変わった。そのときトランプ復活の望みは絶たれた。

投票日の何カ月も前からトランプはツイッターで、郵便投票が不正を誘発すると訴えていた。投票日翌日の11月4日、トランプが起床した頃には、激戦州の前夜までのリードが、主に郵便投票の開票が進んだために消えていた。トランプは票を「だまし取られた」と確信したと、後にある友人に語っている。

本誌は今回、ホワイトハウスのスタッフ、選挙陣営の補佐官、トランプ一家の友人ら6人以上に話を聞いた(いずれも率直に語るため匿名)。

トランプの確信が、複数の州で選挙結果に異議を唱える散発的な試みに拍車を掛けた。法律顧問の顔触れが次々に替わり、選挙法の専門知識があるのは数人だけ。陣営の戦略は混乱と機能不全に陥った。

陣営内外の人々が、開票結果を認めずに戦えと大統領をけしかけた。米チャップマン大学教授(当時)で憲法学者のジョン・イーストマンは、カマラ・ハリスの出生をめぐって副大統領になる資格を疑問視する論説を本誌に寄稿し、トランプの関心を引いた。ちなみに、イーストマンの指摘は広く否定されている。

身内では、長男のドナルド・トランプJr、スティーブン・ミラー大統領上級顧問、私的な顧問弁護士のルディ・ジュリアーニ、マイケル・フリン元国家安全保障担当大統領補佐官などが強硬論を唱えた。スティーブ・バノン元大統領首席補佐官・上級顧問と保守系ラジオの司会者マーク・レビンはラジオやポッドキャストで、不正行為があったと執拗に繰り返した。

ホワイトハウス関係者や家族の友人によると、トランプの長女イバンカと娘婿のジャレッド・クシュナーらは、選挙の不正をめぐる戦い方について慎重だった。

イバンカ夫妻の友人は次のように語る。「しかるべき時が来たら身を引かなければトランプの名誉が傷つくと、彼らは懸念していた」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=続伸、マグニフィセント7などの決算に

ビジネス

NY外為市場=円、対ユーロで16年ぶり安値 対ドル

ビジネス

米テスラ、新型モデル発売前倒しへ 株価急伸 四半期

ワールド

原油先物、1ドル上昇 米ドル指数が1週間ぶり安値
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 7

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 10

    ロシア、NATOとの大規模紛争に備えてフィンランド国…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中