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バイデンのアメリカ

バイデン選挙公約実現のカギは、同い年の共和党重鎮ミッチ・マコネル

BIDEN’S FIRST 100 DAYS

2020年11月20日(金)06時40分
スティーブ・フリース

バイデン副大統領(右)とケンタッキー州選出の共和党院内総務ミッチ・マコネル(左、2015年当時) Larry Downing-REUTERS

<コロナと不況対策は待ったなし。新大統領就任を確実にしたバイデンだが、「ねじれ」が待つなか、最初の100日をどう乗り切るのか。オバマ政権時代に抵抗姿勢を貫いたマコネルとの対話が肝になるが、2人の間には個人的な関係もある>

(本誌「バイデンのアメリカ」特集より・前編)

世界中が胃の痛くなる思いで各地の開票作業を見守るなか、ドナルド・トランプ現大統領御用達のFOXニュースも含む主要メディアがついに「バイデン当確」を報じたのは11月7日の土曜日だった。しかし、政権移行に向けた準備はその前から水面下で始まっていた。

激戦州での票の出方に一喜一憂することも、現職大統領の独断的かつ勘違いな勝利宣言に動じることもなく、テッド・カウフマン(大統領選で勝利を確実にしたジョー・バイデンの地元デラウェア州選出の元民主党上院議員)率いるバイデン陣営の政権移行チームは、ズームや電話会議を利用し、時にはソーシャルディスタンスに留意しつつも対面で、綿密な協議を重ねていた。
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前副大統領のバイデンが今夏の民主党全国大会で打ち出した壮大な政策プランを実現していくには誰を、どのポジションに就けるのがベストなのか──。

投票が終わってからも情勢は激しく動いていた。連邦議会上院で民主党が念願の過半数を取り戻すのではないかという甘い期待は、すぐに遠のいた。おそらく共和党重鎮でケンタッキー州選出のミッチ・マコネルが、今後も上院院内総務にとどまるだろう。

そうであればバイデン政権は当初から議会の「ねじれ」を抱えることになり、公約実現のハードルは高くなる。公共事業への大胆な支出拡大はもちろん、移民問題や気候変動、医療保険制度、そして警察改革の進展にもブレーキがかかる。

「投票の終わった日の夜が明けるまでに、バイデン政権の『最初の100日』が実り多きものになるという期待はしぼみ、オバマ政権の7年目以降に立ちはだかったマコネルの壁が再び姿を現した」。政権移行チームのあるメンバーは本誌に、匿名を条件にそう語った。

「議会の上下両院とも味方だったら、この作業はもっと楽しかったはずなのだが」

新政権を待ち受ける諸問題をさらに複雑にするのが、新型コロナウイルスの爆発的感染だ。アメリカだけでも感染者数の合計は1000万人を超えた。

匿名の政権移行チームメンバーはこうも言った。「今は新型コロナウイルスの話ばかりだ。まだ(多くの改革を断行する)夢は捨てていない。だがどこまで実現できるか、自信はない」

夢を捨てないために、当座の対策として考えられるのは大統領令の連発だろう。大統領令は議会の承認なしで出せる。まずはトランプの出してきた数々の大統領令を取り消すことだ。

その上で、閣僚や政治任命の幹部職員の戦略的配置で政策実現の道を確保する。さらに主要な課題を絞り込み、バイデン自身の豊かな議会経験と敵をつくらない人柄を武器として、上院共和党を仕切るマコネルと話をつければいい。

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