最新記事

2020米大統領選

アメリカ大統領選挙めぐりトランプが募る法廷闘争募金 大半の使途は「その他」、その実態は──

2020年11月15日(日)12時02分

トランプ米大統領は、大統領選で不正が行われたという根拠のない主張により、選挙結果を否定しようとしている。写真は8日、アリゾナ州フェニックスの開票所前で、トランプ氏支持を訴える支持者(2020年 ロイター/Jim Urquhart)

トランプ米大統領は、大統領選で不正が行われたという根拠のない主張により、選挙結果を否定しようとしている。そうした中、同氏の陣営は選挙を巡る法廷闘争の資金手当てに協力を求めるとして、支持者に電子メール攻勢を掛けている。「左派はこの選挙を盗もうとするだろう!」と、あるメールには書かれていた。

ところが、これに応えてトランプ氏の草の根支持者が例えば少額を献金しても、訴訟費用には一切流れない見通しだ。ロイターが献金要請メールの法的文言を精査したところ、こうしたことが分かった。

メールに記された資金調達に関する開示文書に基づくと、ある人の献金が8000ドル(約84万円)を超えなければ、大統領選関連の訴訟費用を賄うために設立された「再集計基金」には1ドルも入らない。この場合の訴訟とは、票の再集計や「不正行為」の疑いを巡る提訴のことだ。

支持者が電子メールの献金要請書を開くと、「公的選挙防衛基金」と題されたウェブサイトに誘導され、「選挙日が過ぎてもその結果を守り、戦い続けるため」、定期的な献金を登録するよう求められる。

細かい文字を読むと、大半の献金はその他の優先事項に流れることがはっきり分かる。

献金の大部分は、9日に設立されたトランプ氏のリーダーシップ政治行動委員会(PAC)である「セーブ・アメリカ(アメリカを救おう)」と、共和党全国委員会(RNC)に入る。連邦選挙委員会のルールでは、いずれの団体も資金の使途について大きな裁量権を持つ。

トランプ氏陣営とRNC、「セーブ・アメリカ」はいずれも、ロイターのコメント要請に応じなかった。

セーブ・アメリカのようなリーダーシップPACはしばしば著名な政治家が設立し、自分ではない他の候補者向けに資金を支出したり、あるいは自分の旅行やホテル滞在費などの費用に充てたりもする。

開示文書は、トランプ氏とRNCは、献金を他の政治的用途や他の選挙戦に回すことができるとする。例えば来年1月にジョージア州で行われる見通しの上院議員決選投票だ。この投票は、共和党が上院で多数派を維持できるか否かを決するもので、選挙費用は米国の歴史上、屈指の高さになる公算が大きい。

トランプ氏の献金要請サイトでは、「公的選挙防衛基金」、「今すぐ献金を」という題名が大文字でバナー表示されている。

ページをスクロールしていくと、献金者は細かい文字列にたどり着き、そこには献金が「セーブ・アメリカ」とRNCに分割され、前者に60%、後者に40%入ると記されている。1件の献金での「セーブ・アメリカ」への法定上限は5000ドルで、開示文書によれば、献金がこの額を超えなければ、その献金からトランプ氏の「再集計」基金に流れる金額はゼロになる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

根強いインフレ、金融安定への主要リスク=FRB半期

ビジネス

英インフレ、今後3年間で目標2%に向け推移=ラムス

ビジネス

米国株式市場=S&Pとナスダック下落、ネットフリッ

ワールド

IMF委、共同声明出せず 中東・ウクライナ巡り見解
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負ける」と中国政府の公式見解に反する驚きの論考を英誌に寄稿

  • 4

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 5

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 8

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 7

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 8

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 9

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 10

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中