最新記事

台湾海峡

「中国は米大統領選後の混乱に乗じて台湾に手を出すかもしれない」台湾外交部長

China May Exploit U.S. Election Uncertainty to Target Taiwan, Minister Says

2020年11月4日(水)16時10分
ジョン・フェン

今年4月、台湾沿岸に表れた中国の空母「遼寧」と艦載機のJ-15戦闘機(写真は2017年の南シナ海) Mo Xiaoliang-REUTERS

<米大統領選でアメリカの政情が不安定化することを、最も恐れているのは人口2300万人の民主主義・台湾かもしれない>

台湾の呉釗燮(ジョセフ・ウー)外交部長(外相に相当)は11月2日、アメリカ大統領選挙後の混乱に乗じて、中国が軍を用いて台湾に対する作戦を活発化させる恐れがあると警戒感を示した。

さらに翌3日には、台湾は「必要なすべての準備」を整えたと国防部長(国防相に相当)が発言した。政権の主要幹部が出席する国家安全会議を蔡英文(ツァイ・インウェン)総統が招集し、軍に「厳戒態勢」を取るよう指示したのを受けてのことだ。

大接戦で11月3日の投票日を迎えたアメリカ大統領選挙の行方を、人口2300万人の民主主義国・台湾は注視している。台湾政府はこれまで、対中強硬姿勢をとるドナルド・トランプ米大統領のおかげで、中国との対立に自信を深めてきた。

だが現在、台湾政府は中台関係における力学の変化に備えている。トランプの対立候補で民主党候補のジョー・バイデン前副大統領が勝利する見込みが強まっているからだ。

外交部長の呉は2日、立法院の国防委員会で議員を前に発言し、中国政府がこの機会に乗じ、台湾に対する武力による威嚇行為をエスカレートさせる可能性があると述べた。中国政府は台湾を、自らの領土の一部だと主張している。

「我々は多くの可能性を検討している。その1つは、大統領選挙後も勝者がすんなり決まらない不安定な時期が長期化すれば、その間隙を突いて中国が武力で台湾を脅す可能性だ」と、呉は述べた。

「今のところ、中国軍にさらなる動きはない。中国が軍を動かす場合は、事前に何らかの予兆があるはずだ」と、呉は付け加えた。

多極化志向をとる蔡政権の外交努力を率いる呉は、立法院の議員に対し、アメリカがこの地域に積極的に関わる姿勢は、米国内の政治情勢にかかわらず変化しないだろうとの見方を示した。

「アメリカ国内での不確実性に関係なく、アメリカこの地域での軍事プレゼンスを維持すると私は確信する。中国がその軍事力を用いる事態を牽制するために、プレゼンスを増強する可能性さえあるはずだ」と呉は述べた。

さらに呉はこう続けた。「我々は今後もアメリカと緊密に連絡を取り、情報を共有すると共に、(あらゆる脅威に)最も適切な方法で対応するための十分な時間を確保していく」

蔡政権は、台湾・米国貿易および投資枠組協定(TIFA)の締結に向けたアメリカ政府との交渉を「積極的に推進している」と呉は国防委員会に述べたが、交渉がいつ再開するかについては正確な時期を示せなかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ジュリアーニ氏らアリゾナ州大陪審が起訴、20年大統

ビジネス

トヨタ、23年度は世界販売・生産が過去最高 HV好

ビジネス

EVポールスター、中国以外で生産加速 EU・中国の

ワールド

東南アジア4カ国からの太陽光パネルに米の関税発動要
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 9

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 10

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中