最新記事

女性差別

対話集会でトランプを追い詰めた女性アンカーに敵対的性差別主義者が激怒

Savannah Guthrie 'B****' Google Searches Surge Follow Trump Town Hall

2020年10月20日(火)17時20分
カシュミラ・ガンダー

英ウェストミンスター大学のシルビア・ショー上級講師(英語および言語学)は本誌宛てのメールの中で、多くの人が「bitch」や「cunt」などの言葉を使ったのは、ガスリーについて出来るだけ強い中傷の言葉を探した結果だろうと指摘する。「選挙を控えたアメリカで激しさを増している政治的分極化に、性差別的な要素が加わった」と語った。

「bitch」などの言葉は「積極的・自己主張が強い」と受けとめられる著名な女性を攻撃するのに使われるのかと尋ねたところ、ショーは、公の場で威厳のある振る舞いをすることは「伝統的・ステレオタイプ的に男性と関連づけられる行為」のため、女性がそれをすることを問題視する人々は常にいると説明し、次のように語った。「男性が積極的に自分の意見を主張するのは称賛される傾向があるが、女性が同じことをすると必ず批判される」

こうした風潮は、威厳のある振る舞いが求められる場面で、女性にとっての「ジレンマ」になるとショーは言う。対話集会の進行役を務めていたガスリーがまさにそうで、「積極的な姿勢で臨むと『やりすぎ』だとして否定的な評価が下されるが、積極的に発言しないと無能で弱い(これも女性が避けなければならないジェンダー規範の押しつけだ)と思われる」と彼女は指摘した。

「武器」として使われた性差別

もちろん、男性も公の場での振る舞いについて批判を受けることはある。だがショーは、男性に対する中傷と異なり、女性に対する中傷は「女性を性的に貶めたり、家庭に縛りつけたりする」露骨な言葉が多いと指摘する。そして、2008年の大統領選でヒラリー・クリントン候補に向けて「俺のシャツにアイロンをかけろ」というプラカードが掲げられた例を挙げた。

英オックスフォード大学のデボラ・キャメロン教授(言語・コミュニケーション学)は、ガスリーに対する攻撃は「現在のアメリカ政治の極度の分極化」が原因だという考えを示した。キャメロンは、男性の進行役が同じような態度を取った場合にも、ガスリーと同じように侮辱的な、あるいは汚い言葉で攻撃を受けるのは同じだろうが、使われる言葉の種類は異なるだろうと指摘。進行役が黒人、ラテン系、障害者、同性愛者だった場合も同じだろうと述べた。

「ガスリーを批判した人々は、彼女が女性だから性差別的な言葉を武器として使えた。だが彼らが怒ったのは、ガスリーが女性だからではない。彼女がトランプを悪く見せたから、というのが主な理由だ」とキャメロンは語った。

米オクシデンタル大学のジェニファー・M・ピスコポ准教授(政治学)は、社会心理学に関する学術誌「Group Processes and Intergroup Relations」に発表された研究報告を引き合いに出し、敵対的な性差別主義が一部のトランプ支持者を駆り立てていることが、研究によって示唆されていると述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア・ガスプロム、今年初のアジア向けLNGカーゴ

ワールド

豪CPI、第1四半期は予想以上に上昇 年内利下げの

ワールド

麻生自民副総裁、トランプ氏とNYで会談 中国の課題

ビジネス

米石油・ガス業界のM&A、第1四半期は過去最高の5
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 7

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 8

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中