最新記事

人種問題

ファッション業界でも人種差別へボイコット 黒人デザイナー、イタリアの人種差別に挑む

2020年9月20日(日)14時27分

両親がハイチ系とイタリア人の著名ファッションデザイナー、ステラ・ジーンさんはトムソン・ロイター財団のインタビューで、イタリアのファッション業界で人種差別の話題がタブーになっているのを最近目の当たりにしたと語った。写真はローマで6月、米黒人男性のジョージ・フロイドさんが白人警官に暴行され死亡した事件を受けて抗議する人たち(2020年 ロイター/Remo Casilli)

両親がハイチ系とイタリア人の著名ファッションデザイナー、ステラ・ジーンさん(41)はこのほど、業界の人種差別に抗議し、今月開かれる「ミラノ・ファッション・ウイーク」への参加を辞退した。トムソン・ロイター財団のインタビューで彼女は、イタリアのファッション業界で人種差別の話題がタブーになっているのを最近目の当たりにしたと語った。

ジーンさんは著名デザイナー、ジョルジオ・アルマーニさんに重用された元モデルで、イタリアの権威あるファッション評議会に黒人として初めて起用された。「ステラジーン」ブランドは明るい色彩のスカートやドレスで知られ、歌手のビヨンセさんやリアーナさんなど著名人が着用している。

イタリアのファッション業界で人種絡みの問題が増えているのを目にして、もう黙ってはいられないとジーンさんは考えた。


「ファッション評議会史上初の、そして唯一の黒人デザイナーとして、私たちマイノリティーが経験している極端な阻害感を、それに気付いていない人々に説明する責任がある」とジーンさんは語った。

イタリアのファッションブランドでは近年、人種差別的とされる商品が批判を浴びる事例が相次いだ。グッチが昨年販売した、赤い唇で縁取られた穴のある黒いタートルネック・セーターや、プラダが2018年に販売した、唇の分厚い猿を模したキーチェーンなどだ。

ジーンさんにとって人種差別は、生まれてこのかた「付いて回る不快な旅の友」のようなものだった。しかしファッション業界で差別に直面したのはごく最近になってからだ。それは人種差別の話題を持ち出した時だった。

「今もなお、イタリアで人種差別の話題を持ち出すのは、さらけだせないようなタブー」であることを悟ったという。

イタリアは他の欧州諸国に比べて白人の割合が大きく、植民地支配の過去や人種差別、人種間の融合を巡る議論が比較的少ない。

同国に住民登録している約6000万人中、外国人は約9%で、うちサブサハラ(サハラ以南)のアフリカ出身者は50万人弱だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米テスラ、従業員の解雇費用に3億5000万ドル超計

ワールド

中国の産業スパイ活動に警戒すべき、独情報機関が国内

ワールド

バイデン氏、ウクライナ支援法案に署名 数時間以内に

ビジネス

米耐久財コア受注、3月は0.2%増 第1四半期の設
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 2

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 3

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」の理由...関係者も見落とした「冷徹な市場のルール」

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 6

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 7

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    コロナ禍と東京五輪を挟んだ6年ぶりの訪問で、「新し…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中