最新記事

環境

米カリフォルニア州、ガソリンエンジンの新車販売禁止へ 温室効果ガス削減のため35年から

2020年9月24日(木)10時44分

米カリフォルニア州のニューサム知事は23日、ガソリンエンジンを動力とする乗用車とトラックの州内での新車販売を2035年から禁止する方針を示した。同州コルマで2017年10月撮影(2020年 ロイター/STEPHEN LAM)

米カリフォルニア州のニューサム知事は23日、ガソリンエンジンを動力とする乗用車とトラックの州内での新車販売を2035年から禁止する方針を示した。電気自動車(EV)への移行を促進し、温室効果ガス排出量の削減を図ることが狙い。

記者会見で、カリフォルニア州はガソリン駆動の新車販売を35年までに段階的に廃止する「確固たる目標」にコミットすると指摘。他の州にも同様の措置の導入を促すとした。

同州は温室効果ガス排出量を2050年までに1990年比で80%減らす目標を掲げているが、ここ数年は輸送部門の排出量が増えていた。

ニューサム知事の打ち出した目標に基づき、カリフォルニア州大気資源局(CARB)は州内で販売される新たな乗用車とトラックの全車両について、35年までに排出ガスがゼロであることを義務付ける規則を作成する予定。また、実現可能なら中型車と大型車の全車両の排出ガスをゼロにすることを45年までに義務付ける計画だという。

カリフォルニア州は米最大の自動車市場であり、国内販売の約11%を占めている。

ニューサム氏が署名した州知事令は、35年以降はガソリン駆動の乗用車をゼロにする「目標」を設定する一方、州内でガソリン車を所有したり、ガソリン車を中古車市場で販売したりすることは禁止していない。

トランプ政権は反発

ホワイトハウスのジャッド・ディア報道官は声明で、カリフォルニア州の措置は「警戒すべき」だとし、雇用喪失につながり、消費者のコスト負担も増えると批判。「トランプ大統領が支持することはない」とした。

カドロー米国家経済会議(NEC)委員長はブリーフィングで「非常に極端な」措置で、他の州は同様の動きを示していないと指摘。「化石燃料を排除するいかなる措置も講じるべきではない」との認識を示し、「全ての自動車について消費者に選択権を与えるべきだ」と訴えた。

大統領選の民主党候補バイデン前副大統領の広報担当、マット・ヒル氏はEVについて「高賃金で労働組合化された百万人の雇用を創出し、世界的な高成長市場を支配し、気候危機下のニーズを満たす」潜在性があると強調。ただ、バイデン氏は「禁止ではなく、奨励金や投資の観点で考えている」とした。

カリフォルニア州は、英国などの15カ国と同様の目標を設定し、足並みをそろえたとの立場を示した。

ニューサム知事はまた、州議会に対し、シェール開発に欠かせないフラッキング(水圧破砕法)技術について、石油・ガス掘削での利用への新たな認可を2024年までに禁止するよう求めた。

トランプ政権はカリフォルニア州が独自に自動車排ガス規制を設け、無公害車の販売を義務付ける権限を剥奪すると決めており、法律専門家は、この決定の法的有効性が認められた場合、2035年からのガソリン車新車販売禁止の阻止につながると指摘する。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・米中新冷戦でアメリカに勝ち目はない
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・コロナ感染大国アメリカでマスクなしの密着パーティー、警察も手出しできず
・中国からの「謎の種」、播いたら生えてきたのは......?


20200929issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

9月29日号(9月23日発売)は「コロナで世界に貢献した グッドカンパニー50」特集。利益も上げる世界と日本の「良き企業」50社。PLUS 進撃のBTS

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン、イスラエルへの報復ないと示唆 戦火の拡大回

ワールド

「イスラエルとの関連証明されず」とイラン外相、19

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、5週間ぶりに増加=ベー

ビジネス

日銀の利上げ、慎重に進めるべき=IMF日本担当
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 4

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中