最新記事

光学

世界最大3200メガピクセルのデジタル写真の撮影に成功

2020年9月23日(水)17時30分
松岡由希子

The complete focal point. Credit SLAC

<米スタンフォード大学が運営するSLAC国立加速器研究所の研究チームは、世界最大のデジタル写真の撮影に初めて成功。南米チリに建設中のベラ・ルービン天文台に設置される望遠鏡に組み込まれる...... >

米国エネルギー省(DOE)傘下で米スタンフォード大学が運営するSLAC国立加速器研究所の研究チームは、世界最大となる3200メガピクセル(32億画素)のデジタル写真の撮影に初めて成功した。

約24キロ先のゴルフボールが見える

この画像は、フルサイズでの表示に4Kテレビの超高精細ディスプレイ378台を必要とするくらいの大きさで、約15マイル(約24キロ)先のゴルフボールが見えるほどの高解像度だ。この撮影に用いられた巨大な光学センサーは、南米チリのパチョン山に建設中のベラ・ルービン天文台に設置される「大型シノプティック・サーベイ望遠鏡(LSST)」の焦点面として組み込まれる。

この焦点面の基本的な構造は、一般的なデジタルカメラやスマートフォンのカメラ機能と同様だ。対象物から放射または反射した光をとらえ、これを電気信号に変換し、デジタル画像を生成する。異なるのは、その大きさと感度の高さだ。この焦点面には、16メガピクセルのCCDイメージセンサが189個用いられている。

フルサイズのデジタルカメラの画像センサーが幅1.4インチ(約3.5センチ)であるのに対して、その幅は2フィート(約61センチ)を超え、満月40個分の大きさに相当する空をとらえられる。また、肉眼よりも1億倍暗い対象物を認識でき、いわば、数千マイル先からロウソクを認識できるほどの高感度となっている。

descarga-1.jpeg

約24キロ先のゴルフボールが見えるほどの高解像度 SLAC


この焦点面は、CCDイメージセンサ9個を集めてモジュール化した「ラフト」をエネルギー省ブルックヘブン国立研究所からSLAC国立加速器研究所に納入させ、研究チームが21個の「ラフト」と撮像には使用されない特殊なラフト4個を配置し、6ヶ月かけて組み立てられた。

撮像範囲を最大化するため、CCDイメージセンサ間の隙間を人毛5本分未満にとどめている。また、極めて高解像度で鮮明な画像が生成できるよう、焦点面は非常に平らで、その粗さは人毛の幅の10分の1未満だ。

Rubin Observatory Camera Assembly TimeLapse

世界最大級の光学レンズなどを組み込む

研究チームは、撮影に先駆けてこの焦点面をクライオスタッド(低温保持装置)の中に置き、センサーをマイナス101℃にまで冷やしたうえで、カリフラワーの一種「ロマネスコ」などを対象物としてデジタル写真を撮影した。巨大な光学センサーによって、対象物が非常に詳細にとらえられている。

matuoka0923c.jpgCredit SLAC


研究チームでは、今後数ヶ月かけて、世界最大級の光学レンズやシャッター、フィルター交換システムを組み込み、2021年半ばまでには最終検査を実施する計画だ。

lens875x500.jpgPhoto by Farrin Abbott/SLAC National Accelerator Laboratory
,

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米英欧など18カ国、ハマスに人質解放要求 ハマスは

ビジネス

米GDP、第1四半期は+1.6%に鈍化 2年ぶり低

ビジネス

米新規失業保険申請5000件減の20.7万件 予想

ビジネス

ECB、インフレ抑制以外の目標設定を 仏大統領 責
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP非アイドル系の来日公演

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 7

    やっと本気を出した米英から追加支援でウクライナに…

  • 8

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 9

    自民が下野する政権交代は再現されるか

  • 10

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中