最新記事

K-POP

韓国、アイドルファンも抗議デモ 愛すればこそ、裏切られた怒りは激烈

2020年5月30日(土)11時00分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

韓国では政治だけでなく、K-POPファンも抗議デモをして、自らの意志を伝えようとする。더스타 / The STAR / YouTube

<デモというと政治の世界の話と考えがちだが、K-POPファンの世界でもデモはたびたび行われている>

韓国は政治などからも見てわかるように、世論が強いイメージがあるが、その風潮は韓国アイドルファンたちの間でも見られる。事務所やレコード会社に意見をぶつけるファンたちを見ていると、日本と韓国ではアイドルとファンとの距離に違いがあるように感じられる。

例えば、ソウルの地下鉄を歩いていると、アイドルの写真と「誕生日おめでとう」のメッセージが書かれた看板を目にすることがある。これはファンたちがお金を出し合って、駅に広告を出しているのだ。また、以前筆者の友達は、お目当てのまだ無名新人アイドルのマネージャーと仲良くなり、プレゼントをマネージャーに直接手渡しして、スケジュールを聞いたりしていた。

かつて筆者が映画撮影現場で働いていた頃、出演俳優の差し入れなどもよくあった。ファンからの差し入れも多く、ランチや夜食のケータリングサービスもファンたちがお金を出し合って手配してくれるのだ。他にも、ファンクラブ一同でボランティアに参加したり、スターの名前の付けた植樹をする例もよく芸能ニュースで報道されている。

このように、日本とは微妙に熱烈な応援をする韓国ファンたちだが、それだけ熱い思いを抱いている分、事務所が応援するアイドルたちのことをないがしろにしたり、アイドル本人がファンを蔑んだりすると、許せないと反発を覚えるようだ。

レディーガガとのコラボで今話題のBLACKPINKも

今月14日、K-POP女性アイドルグループ「BLACKPINK」のファンたちが、彼女たちの所属事務所であるYGエンターテイメントを相手にデモを行い注目された。デモ会場には車の側面に垂れ幕が貼られたトラックも登場し話題となった。

ファンたちの主な要求とは、YG所属の他のアイドルグループに比べ、BLACKPINKの活動が少ないことへの不満である。ファンたちは、「1年に2回のカムバック」「最低6曲以上の新曲が収録されたアルバムの発売」「YouTubeチャンネルの活用」「様ざまなテレビ番組やイベントなどへの出演」「悪質なネット書き込みへの積極的な対応」などを求めている。ちなみに、ここでの「カムバック」とは、韓国音楽業界特有の表現で新曲の発表のことであり、日本語でイメージする「一度引退して芸能界に戻ってくる」というわけではない。

6曲以上収録のアルバムなど、あまりにも具体的な内容の要求に驚かされるが、実は今回のデモは2度目のことであり、昨年12月にもBLACKPINKのファンは同様の内容でデモを行っていた。今回はその後全く改善していないことへの抗議の意味も含まれている。

1度デモを行っただけで満足するのではなく、その後の経過を見届け、要求が通ってないとなるとさらにデモを再度敢行する姿勢や、相手に具体的な提案をする点、トラックなど大型の車両を利用し、パフォーマンス的要素をマスコミにアピールしてニュースに取り上げてもらうやり方などは、抗議デモとして見事な方法だと言える。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

東京ガス、25年3月期は減益予想 純利益は半減に 

ワールド

「全インドネシア人のため闘う」、プラボウォ次期大統

ビジネス

中国市場、顧客需要などに対応できなければ地位維持は

ビジネス

IMF借款、上乗せ金利が中低所得国に重圧 債務危機
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中