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膀胱で発酵し、アルコールを生成する珍しい症例が明らかに

2020年2月28日(金)16時00分
松岡由希子

当初、アルコール依存症を隠している?と考えられたが...... PongMoji-iStock

<米ペンシルベニアで膀胱内でアルコールが生成されていたという症例が世界で初めて報告された......>

腸発酵症候群(自動醸造症候群)とは、腸管内の出芽酵母によって糖が分解され、エタノールを生成する腸内発酵により、炭水化物を摂取するだけで急性アルコール中毒を引き起こすほどのエタノール量を消化器系で生成してしまう症状をさす。

そしてこのほど、「尿路系での内因性発酵によりエタノールを生成する」という症例が世界で初めて報告された。腸発酵症候群とは似て非なるこの珍しい症状は「尿自動醸造症候群」と呼ばれている。

当初、アルコール依存症を隠している?と考えられた

アメリカ内科学会(ACP)の医学学術雑誌「アナルズ・オブ・インターナル・メディシン」で2020年2月25日に公開された症例報告によると、肝硬変と糖尿病を患う61歳の女性患者が肝移植待機者リストに登録するべく米ピッツバーグ大学医療センターに来院。

この患者は、他の医療機関でアルコール依存症が疑われ、「肝移植待機者リストへの登録よりも、まずアルコール依存症の治療をすべき」と診断され、肝移植待機者リストへの登録を断られたという。ピッツバーグ大学医療センターでの尿検査でも、アルコールの陽性が何度も確認された。

担当医は当初、患者がアルコール依存症であることを隠しているのではないかと考えていたが、尿内でエタノールが確認されたものの、エタノールの代謝物であるエチルグルクロニドや硫酸エチルは検出されないことがわかった。

患者はアルコールの摂取を否定し続けており、尿で相当量のエタノールが検出されているにもかかわらず、通院中、患者が酩酊している様子も見られなかった。

膀胱に生息する酵母の発酵でエタノールを生成か

患者は、糖尿病の治療が十分でなく、尿検体では、尿中ブドウ糖が多い「高尿糖」が認められたほか、多くの出芽酵母も検出された。

研究者は「膀胱に生息する酵母の発酵によって、糖を分解し、エタノールを生成しているのではないか」との仮説のもと患者の尿を分析。その結果、ビール酵母の近親種のヒト常在真菌「カンジダ・グラブラータ」が膀胱の糖を使って発酵し、エタノールを大量に生成したことが確認された。

担当医らは、症例報告において「この症例は『尿自動醸造症候群』の徴候をたやすく見落としてしまう可能性があることを示している」と述べ、「臨床医は診療録や検査結果に細心の注意を払い、一致しない事象について常に精査すべきである」と説いている。

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