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英首相ジョンソンは総選挙辞さぬ構え 議会が合意なき離脱阻止なら

2019年9月3日(火)08時04分

英議会が英国の「合意なき」欧州連合(EU)離脱を阻止すれば、ジョンソン首相が総選挙に踏み切るとの観測が強まっている。写真は2日、ロンドンで撮影(2019年 ロイター/Simon Dawson/Pool)

ジョンソン英首相は2日、英国の欧州連合(EU)離脱延期をEU側に要請する可能性を排除し、議会が英「合意なき」EU離脱を阻止すれば、総選挙の実施を余儀なくされるとの考えを示した。

議会は3日、夏休みの休会を終え再開する。合意なき離脱に反対する野党・労働党と与党・保守党の造反議員はEU離脱期日を3カ月延期する法案の可決を目指す構えを明示している。

ジョンソン首相はこの日開いた閣議後、「EUに対し延期を要請することはまずないと理解してもらいたい」と言明。「英国は10月31日にEUを離脱する。たら、ればはない」と述べた。

その上で「私も誰も総選挙を望んでいない。国民の課題を進めていくべきだ」とした。議員がEU離脱延期を可決すれば、英国の立場を大幅に弱体化させ、「今後の交渉は完全に不可能となる」と強調した。

政府高官によると、議会が合意なき離脱阻止に動けば、ジョンソン首相は早ければ10月14日に総選挙に踏み切る考えという。

保守党の院内幹事室の高官がこの日、造反議員には除名や次の選挙で保守党からの立候補禁止の処分が下されると警告したことを受け[nL3N25T29Z]、ジョンソン首相が10月17─18日のEU首脳会議前に総選挙を実施する可能性があるとの観測が高まっていた。

労働党のコービン党首は「総選挙を求める」とし、ジョンソン首相の「偽りの大衆主義の徒党」を排除すると言明。「合意なき離脱を阻止するために一丸となる必要がある。今週が最後のチャンスかもしれない」と述べた。

トニー・ブレア元首相は、ジョンソン氏が労働党に対し仕掛ける「大きな罠」を回避するよう警告。「ジョンソン氏は、合意なき離脱案のみでは失敗する可能性があるが、総選挙を組み合わせれば勝利する可能性があることを理解している。コービン氏が首相になるとの懸念が存在するからだ」とけん制した。

ジョンソン首相の報道官は、総選挙を計画しているかとの記者団からの質問に対し「首相がこれまでも述べてきている通り、総選挙は望んでいない」とした。

英ブックメーカー(賭け屋)のラドブロークスによると、年内に総選挙が実施される確率は75%との見方が織り込まれ、10月と見る向きが最も高い。

総選挙となった場合(1)EU離脱を支持するジョンソン政権が勝利(2)コービン党首率いる労働党が勝利(3)宙づり議会(ハングパーラメント)となり、連立政権や少数与党政権が誕生する──といったシナリオが考えられるという。

[ロイター]


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