最新記事

9・11テロ

9.11救助犬の英雄たちを忘れない

Remembering 9/11 Service Dogs

2019年9月13日(金)16時30分
クリスティナ・チャオ

ビル崩壊現場で遺体捜索活動に従事し、2010年に亡くなった救助犬のライリー Preston Keres US Navy-REUTERS

<同時多発テロから18年目を迎えた9月11日、ニューヨークのワールドトレードセンター崩壊現場で捜索や救助にあたった犬たちを讃えるツイートが広がった>

2001年9月11日に発生した米同時多発テロから18年目を迎えた9月11日、アメリカ各地で人々がテロの犠牲者を追悼した。そんななか、当時ニューヨークの世界貿易センタービルの崩壊現場で捜索・救助活動に従事した勇敢な犬たちを紹介するツイッターに多くの人が共感を寄せた。

<参考記事>9.11のあの日から17年――「文明の衝突」から「文化の衝突」へ

きっかけを作ったのはニューハンプシャー州の狩猟ガイド、アンドリュー・シャッツ。11日零時頃に最初のツイートを出した。「9.11から時が経過し、ビル崩壊の映像を見てもさほど衝撃を受けなくなってしまった。あの時の気持ちを思い出すために、現場の話に焦点を当てようと思った。今年は、9.11の犬たちだ」

写真の犬は、瓦礫に埋もれた犠牲者の遺体を捜索したライリーだ。

これを皮切りに、シャッツは多くの救助犬を写真で紹介した。なかには救助活動中に死亡した犬もいる。11日午後には、シャッツの投稿は15万の「いいね」を集め、数万のリツイートが寄せられた。

(シャッツの最初のツイッター投稿)


本誌の取材に対してシャッツは、「救助の英雄たちに注目して欲しかった。あまり語られない9・11の主役だと思ったから」と語った。

<参考記事>「飼い主様を救え!」 必死に心肺蘇生術を施す犬のビデオが話題に

「僕は狩猟犬と一緒に鳥のハンティングに出掛けるので、犬とは個人的な関係を持っていた」とシャッツは話す。「ビル崩壊の映像が繰り返し流され、みんな感覚がマヒしてしまった。こういう現場の話を聞けば思い出すのではないか」

「惨劇や救助犬のことを話すといつも、みんなの琴線に触れる。今のように社会が政治的に分断している時でさえ......。この話は、人々の心を一つにできる」

(現場に最後まで残った救助犬ブルターニュ。その後ハリケーン災害でも救助活動に参加した。2016年7月に死去)



(現場で一番有名な救助犬ライリー。生存者を発見する訓練を受けた犬で、遺体捜索の訓練は受けていなかったが、それでも懸命に働いた。2010年2月に死去)



(テロ発生15分後に現場に到着したアポロ。ビル崩壊の炎で焼かれそうになったが、直前に水に落ちて濡れていたので助かった。2006年11月に死去)



(カナダ・ノバスコシア島からハンドラーに車で連れてこられ、救助に参加したトラッカー。現場で最後の生存者を発見した。2009年4月に死去)



(爆発物探知犬シリウスは現場で死亡した。北棟が攻撃された時に南棟にいた。ハンドラーはシリウスをケージに入れて、「必ずもどってくるよ」という言葉を遺して負傷者の救助に向かった)



(現場に到着したその日に消防士2人の遺体を発見したウォーフだが、直後に引退した。感情を遮断し食事を取らなくなってしまったのだ。「すべての気力を失った。現場で多くの死を見たために、感情を失くしてしまったのだろう」とハンドラーは言う)



(現場で一番小さかった救助犬リッキー。他の犬が入れない隙間にも入れた。ハンドラーが見えない場所にも捜索に入った。夜間シフトで連続10日間働いた)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米GDP、第1四半期は+1.6%に鈍化 2年ぶり低

ビジネス

ロイターネクスト:為替介入はまれな状況でのみ容認=

ビジネス

ECB、適時かつ小幅な利下げ必要=イタリア中銀総裁

ビジネス

トヨタ、米インディアナ工場に14億ドル投資 EV生
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP非アイドル系の来日公演

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 7

    やっと本気を出した米英から追加支援でウクライナに…

  • 8

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 9

    自民が下野する政権交代は再現されるか

  • 10

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中