最新記事

カシミール紛争

仲がいいのか悪いのか......インドとパキスタンの両軍が合同演習に参加

2019年8月27日(火)20時00分
トム・オコナー

パキスタン側にお菓子を贈るインドの国境部隊(17年) SAMEER SEHGAL-HINDUSTAN TIMES/GETTY IMAGES

<1947年の独立以来カシミールを舞台にいがみ合う印パ両国だが、軍事演習には一緒に参加するという不思議な関係>

インドとパキスタンが紛争地カシミールをめぐってにらみ合うなか、奇妙な現象が起きようとしている。ロシアで8カ国が参加して9月に行われる軍事演習に、両国の軍隊が「仲良く」参加するのだ。

ロシア国防省は20日、インドとパキスタンの両軍が中国、キルギス、カザフスタン、タジキスタン、ウズベキスタンの部隊と共に9月16日から8カ所で行われる対テロ演習に参加すると発表した。将兵12万8000人と2万以上の部隊、航空機600機と最大15隻の軍艦・補給船が参加する大規模な訓練だ。

印パ両国は1947年以来、カシミール地方をめぐって小競り合いを続け、3回の紛争を戦ってきた因縁の仲だ。両軍は18年8月、初めて合同で上海協力機構の演習に参加。このときはバレーボールの「対戦」もあり、和解ムードが演出された。

しかし、その後の1年間で長年のライバル同士の関係は著しく悪化。インド政府は8月上旬、カシミールに軍隊を派遣して封鎖し、実効支配するジャム・カシミール州に自治権を認めていた憲法370条を廃止した。当然、パキスタン政府は激怒。国際社会は紛争を懸念しているが、パキスタンのカーン首相は「われわれにできることはない」。インドのモディ首相もどこ吹く風でフランスに旅立った。

片手で殴り合いながら片手で握手するのが、不仲な隣国同士の日常らしい。

<本誌2019年9月3日号掲載>

【関連記事】カシミールを襲うインドの植民地主義
【関連記事】インドのカシミール「併合」は、民族浄化や核戦争にもつながりかねない暴挙

20190903issue_cover200.jpg
※9月3日号(8月27日発売)は、「中国電脳攻撃」特集。台湾、香港、チベット......。サイバー空間を思いのままに操り、各地で選挙干渉や情報操作を繰り返す中国。SNSを使った攻撃の手口とは? 次に狙われる標的はどこか? そして、急成長する中国の民間軍事会社とは?


202404300507issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年4月30日/5月7日号(4月23日発売)は「世界が愛した日本アニメ30」特集。ジブリのほか、『鬼滅の刃』『AKIRA』『ドラゴンボール』『千年女優』『君の名は。』……[PLUS]北米を席巻する日本マンガ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

スペイン首相が辞任の可能性示唆、妻の汚職疑惑巡り裁

ビジネス

米国株式市場=まちまち、好業績に期待 利回り上昇は

ビジネス

フォード、第2四半期利益が予想上回る ハイブリッド

ビジネス

NY外為市場=ドル一時155円台前半、介入の兆候を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 7

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 8

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中