最新記事

中国

変装香港デモ隊が暴力を煽る――テロ指定をしたい北京

2019年8月16日(金)09時45分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

香港「逃亡犯条例」改正を巡り混乱続く Thomas Peter REUTERS

中国中央政府(北京)は何としても香港デモに「テロ」というレッテルを貼り軍を出動させてデモを鎮圧したい。その口実を作るためにデモ隊に変装した香港警察や中国軍を潜り込ませ、デモ行動を意図的に過激化させている。

なぜ香港はテロの兆しを見せ始めたと言えるか?

8月14日、「環球視野」は「なぜ香港はテロの兆しを見せ始めたと言えるか?」という見出しの報道を行った。それによれば、8月12日、中国国務院香港マカオ事務弁公室のスポークスマン楊光氏は、臨時記者会見を開き、11日夜に香港警察が暴徒により火炎瓶を投げつけられた事態を重要視し、激しく非難した。そして以下のように述べている。

――ここのところ、香港の過激派デモ隊は非常に危険な道具で警察官を繰り返し攻撃している。これは既に深刻な暴力犯罪を構成しており、テロの兆しを見せ始めている。これは香港の法治や社会秩序を著しく乱す違法行為であり、市民の生命安全に対する深刻な脅威であり、香港の繁栄と安定を脅かす深刻な挑戦である。

その上で楊光氏は、「テロとは何か?」に関する多くの国際組織による定義を披露している。

定義の内容自体は省くが、「国連によるテロの定義」や「EUのテロリズム概念」などを紹介しているところを見ると、目的は一目瞭然。要は「西側諸国によるテロの定義」と「中国が定めたテロの定義」は一致しており、中国が自国で定めて「反テロ法」に基づいて合法的に武力鎮圧をしても「西側諸国による非難は許されない」という予防線を張っているわけだ。

案の定、楊光氏は2015年12月27日に開催された第12回全人代常任委員会第18次会議で可決された「中華人民共和国の反テロ法」を持ち出してきて、中国におけるテロの定義の説明に入った。中でも現在進行中の香港デモに共通する部分を強調した。

だからこそ逆に、香港のデモは「暴力的な手段」を使用しており、「不特定の民間人が攻撃の標的」となり、「香港市民の社会的経済的発展に著しい弊害をもたらす」ものでなければならない。こうしてこそ「テロ指定」ができるのである。

その「テロ指定できる証拠」として楊光氏は記者会見で過激派が使用する武器を示し、それが香港デモでも使われていることを紹介した。

変装してデモ隊に成りすます香港警察など

香港警察や北京政府からの回し者が変装して、民主を求める側のデモ参加者に成りすましていることは早くから指摘されていた。

しかし当局側が認めたのは、これが初めてのことだ。

8月12日、香港警察(香港警務処のトウ炳強・副処長)は11日の記者会見で、「デモ参加者を装った警察官を動員した」と初めて認めた。なぜなら11日のデモの中で「変装していると思われる警察官がデモ参加者を逮捕している動画」がデモ参加者によって撮影され、インターネットにアップロードされたからだ。この動かぬ証拠を見て、香港警察は「おとり捜査」をしたことを記者会見で認めたのである。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

利上げの可能性、物価上昇継続なら「非常に高い」=日

ワールド

アングル:ホームレス化の危機にAIが救いの手、米自

ワールド

アングル:印総選挙、LGBTQ活動家は失望 同性婚

ワールド

北朝鮮、黄海でミサイル発射実験=KCNA
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32、経済状況が悪くないのに深刻さを増す背景

  • 4

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 7

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 8

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中