最新記事

米ロ軍

ロシア爆撃機がアラスカに接近、米戦闘機がインターセプト

Russia Nuclear Bombers Fly Near Alaska, U.S. Jets Follow

2019年5月22日(水)16時18分
トム・オコナー

米軍のF-22戦闘機(右)の追跡を受けるロシアのTu-95戦略爆撃機(5月21日、アラスカ沖の公海上で) North American Aerospace Defense Command

<米露国境に近いアラスカ沖の上空でロシアの爆撃機が発見され、米軍の戦闘機が追跡した>

核爆弾を搭載できるロシア軍の爆撃機がアラスカ沖を飛行し、米空軍のジェット戦闘機が迎撃態勢に入っていたことがわかった。

ロシア国防省は5月21日、声明を出した。「ロシア空軍の戦略爆撃機Tu-954機が、予定通り出撃した。飛行範囲はチュクチ海、ベーリング海およびオホーツク海の公海上に加え、アラスカ州西岸およびアリューシャン列島の北岸沿に及んだ」

これらの爆撃機は12時間以上にわたって飛行し、「一時、米空軍のF-22ジェット戦闘機の追跡を受けた」。

ロシア国防省はさらに、「長距離を飛ぶパイロットたちは常々、北極海、北大西洋、黒海およびカスピ海、太平洋などの公海上を飛んでいる」と述べた。「他国の領空を侵犯することなく、国際空域管理システムを厳密に順守している」としている。

この一件は、北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)によるソーシャルメディアへの投稿でも裏付けられた。NORADでは早期警戒管制機E-3(愛称:セントリー)を派遣し、監視を行ったという。さらにNORADは、ロシアのジェット戦闘機Su-35数機がTu-95に同行していたと指摘。これらのロシア機は、アラスカ沖の防空識別圏に進入したが、領空侵犯はなく、公海上にとどまったという。

NORADは公式ツイッターアで、以下のように述べた。「NORADに所属する複数の戦闘機が5月20日、アラスカ州のADIZ(防空識別圏)に進入したロシア軍の爆撃機および戦闘機を追跡した。Tu-95爆撃機2機には、F-22戦闘機2機が対応した。その後飛来したTu-95爆撃機2機およびSu-35戦闘機2機に対しては、F-22戦闘機2機が追加で発進した。NORADのE-3が全般的な監視にあたった。ロシア軍の航空機は公海上空にとどまった」


ここは米露の国境

さらにNORADは、同軍司令官テレンス・オショネシー空軍大将の発言を引用し、以下のように伝えた。「国民と基幹インフラへの脅威を防止し、撃退するには、未知の航空機を検知、追跡、識別することが重要だ。我々は毎日24時間、365日警戒にあたっている」

この海域は米露の国境地帯。アラスカとロシアの距離はわずか88キロほどで、島々はもっと接近している。アリューシャン列島の名で知られるベーリング海の島々は、東側がアメリカ領、西側がロシア領となっている。従って今回のような事例も初めてではない。2019年1月には、米軍のF-22戦闘機2機とカナダ軍のCF-18戦闘機2機が、ロシアの戦略爆撃機Tu-160をアラスカ沖上空で追跡した。2018年には、Tu-95がF-22に追跡される事例が少なくとも2件発生している。

<米露の軍事力比較、2019>



一方、ロシア軍も、自国の空域に接近した米軍機に対してスクランブル(緊急発進)をかけている。3月には、北大西洋条約機構(NATO)加盟諸国がロシアと接するバルト海上空において、米軍のB-52H戦略爆撃機に対して、ロシアのSu-27ジェット戦闘機2機が発進した。同じく3月には、バルト海上空を飛行していたRC-135偵察機に向けて、ロシアのSu-27戦闘機が緊急発進している。

(翻訳:ガリレオ)

20190528cover-200.jpg
※5月28日号(5月21日発売)は「ニュースを読み解く哲学超入門」特集。フーコー×監視社会、アーレント×SNS、ヘーゲル×米中対立、J.S.ミル×移民――。AIもビッグデータも解答不能な難問を、あの哲学者ならこう考える。内田樹、萱野稔人、仲正昌樹、清水真木といった気鋭の専門家が執筆。『武器になる哲学』著者、山口周によるブックガイド「ビジネスに効く新『知の古典』」も収録した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

メルセデス、中国パートナーとの提携に投資継続 「戦

ビジネス

日経平均は大幅反落800円超安、前日の上昇をほぼ帳

ビジネス

焦点:国内生保、24年度の円債は「純投資」目線に 

ビジネス

ソフトバンク、9月30日時点の株主に1対10の株式
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中