最新記事

韓国

韓国スマホ事情:サムスンは業績不振、いっぽう高齢者のスマホ中毒が社会問題化

2019年3月5日(火)17時10分
佐々木和義

地下鉄内でスマホを見るソウルの人々  撮影:佐々木和義

<韓国では、サムスンのスマホ事業の不振が不安視されるいっぽう、幼児と高齢者のスマホ中毒が社会問題化している>

サムスンのスマートフォン事業が深刻な不振に陥っている。スマートフォンの販売不振の影響で2018年第4四半期の営業利益が対前年比で30%落ち込んだ。

同じく不振の半導体は起死回生の可能性はあるが、スマートフォンは縮小するパイを奪い合う状況が加速すると見込まれ、サムスンは折りたたみ式のフォルダブルフォンや5Gに期待をかけるが業界は懐疑的だ。

際立つサムスンのシェア低下

2018年第3四半期の世界スマートフォン市場の占有率は、サムスンが19%で首位を守ったが、ファーウェイが14%まで伸び、2位に浮上した。アップルは3位に後退している。年間3億台のスマートフォンを販売してきたサムスンだが、2018年の推定販売数は対前年比7%減の2億9460万台に落ち込んだ。アップルも前年を下回ったが3%減にとどまっており、サムスンの落ち込みが際立っている。

世界スマートフォン市場調査会社のストラテジーアナリティックスは、2019年のサムスンの販売数を2億9000万台と予測する。アップルは前年の2億960万台から微減だが、ファーウエイは2億3000万台規模に拡大するという予測だ。

アップルが2007年にiPhoneを発売してから年ごとに拡大してきたスマートフォン市場だが、2017年に15億台に達したあと減少に転じている。

マイナス成長の要因に、まずは先進国のスマートフォン市場の飽和があげられる。スペックや機能が類似し、革新性もない。これまで通信速度競争を繰り返し、3G世代から4G、LTE、LTE-Advancedと買い替えを誘発してきた。画面も3インチから6インチ台まで拡大したが、最新機種でも消費者が実感する革新はみられない。ケースをかぶせればすべて同じという声すらあり、構造的な問題が大きい。

韓国では、幼児と高齢者のスマホ中毒が社会問題化

いっぽう、韓国ではスマートフォン所有率が95%に達するなか、スマホ中毒が社会問題になっている。近年では、特に幼児と高齢者のスマホ中毒が社会問題として浮上している。

韓国科学技術情報通信部と韓国情報化振興院が2019年2月13日に発表した「2018年スマートフォンや依存の実態調査」によると、韓国人の5人に1人が過依存リスク群に属するスマホ中毒者だった。

スマホ中毒とまで言わずとも、スマートフォンを片手に購入客の商品を清算するコンビニ店員、スマートフォンから目を話すことなく客を呼び込むショッピングモールの店員の姿を目にすることもある。

スマートフォン利用者が最も多く利用するコンテンツはメッセンジャーで、ニュース、インターネットショッピング、SNSが続いている。郵便局は配達状況をメッセンジャーで伝達し、ソウルの都市ガスは通知と請求を印刷出力の戸別配達からメッセンジャーに切り替えた。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

イラン、イスラエルへの報復ないと示唆 戦火の拡大回

ワールド

「イスラエルとの関連証明されず」とイラン外相、19

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、5週間ぶりに増加=ベー

ビジネス

日銀の利上げ、慎重に進めるべき=IMF日本担当
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 4

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中