韓国の受験戦争、大ヒットドラマ「SKYキャッスル」でさらに過熱か
韓国の悪評高い学歴競争社会を痛烈に風刺したケーブルテレビドラマが大ヒットしたことで、その警告を無視して、成功追求に熱を上げる視聴者も一部出てきている。2016年8月、ソウルの高麗大で勉強する学生(2019年 ロイター/Kim Hong-Ji)
韓国の悪評高い学歴競争社会を痛烈に風刺したケーブルテレビドラマが大ヒットしたことで、その警告を無視して、成功追求に熱を上げる視聴者も一部出てきている。
韓国ドラマ「SKYキャッスル(原題)」は、国内の一流大学に子どもを合格させて、高給が約束された仕事に就かせようと、全力を挙げる野心的な家族たちを描いた物語だ。その過程で、成りすましや自殺、殺人事件も発生する。
SKYキャッスルとは、韓国郊外にある架空の高級住宅コミュニティの名前だが、同時に韓国トップのソウル大学(S)、高麗大学(K)、延世大学(Y)の3校の頭文字でもある。
調査会社ニールセン・コリアによると、このドラマは、韓国のケーブルテレビとしては、歴代最高の視聴率をたたき出しており、隣国の中国でもファンを増やしている。
同ドラマは2月1日に最終回を迎えたが、韓国では製作者側が批判の意図を込めて描いた過激な教育手法をまねする人も出てきている。
例えば、勉強に集中するための広さ1平方メートルに満たない木製のクローゼット「スタディーキューブ」は価格が1台250万ウォン(約24万円)するが、このドラマに登場して以降、その売り上げが8倍に跳ね上がった。
「SKYキャッスルにスタディーキューブが出ていたのを見て、勉強に適した環境を作ろうと、自分の意思で買った」。ソウルにある一流大学の医学部進学を目指す高校生イ・ドギョンさん(16)は、そう語る。
勉強内容のみならず、睡眠パターンから友人関係まで事細かに指導する大学入試コーディネーターがドラマに登場すると、大学入試を専門とするコーチの需要が急増した。
Uway教育改革研究所のディレクター、イ・マンキ氏は、大学受験コンサルタント志望者向けのコースを50%増やす計画だという。
こうした現象は、ドラマが意図したものとは真逆の動きだ、とSKYキャッスルの主任プロデューサー、キム・ジヨン氏は言う。
「スダティーキューブに注文が殺到したり、入試コーディネーター探しに熱心な人が出ているというニュースは、脚本家が最も避けたかったものだ」とキム氏は言う。「脚本家は、自分の子どもの大学受験を経験して、行き過ぎた教育熱に警鐘を鳴らしたかったのだ」
トイレで読書
スタディーキューブが韓国に登場した7年前も、国内で議論を呼んだが、SKYキャッスルに登場したことで、プレッシャーの大きい韓国の学歴社会を問い直す声が改めて上がっている。
前出の高校生イさんは、キューブが届いたら、防音が施された環境に自らを隔離して、勉強に没頭することを楽しみにしていると話す。しかし、親がそれを子どもに強制する場合は、「米びつに閉じ込めるのと同じだ」と、18世紀に父の英祖によって米びつに閉じ込められて殺された思悼世子の悪名高い事件を引き合いに出して語った。
スタディーキューブの製造元EMOKのチョイ・キジュ最高経営責任者(CEO)は、隔離することで、学生は邪魔が入らずに集中できると話す。「単純な話だ。トイレにいるときの方が、集中して本を読めるだろう」