最新記事

「嫌われ力」が世界を回す

不倫政治家、IT社長の恋人......「あの女」たちにイラつく心理

FOUL IS FAIR

2018年9月18日(火)17時30分
片田珠美(精神科医)

全てを持っている女性は、羨望の対象になりやすく、特に同性から嫌われる 101dalmatians/iStock.

<ワイドショーの獲物、嫌われセレブに飛び付く「私」の心の奥を精神科医が診察する>

嫌われるセレブには、2つの共通点がある。まず、羨望をかき立てること。羨望とは「他人の幸福が我慢できない怒り」と言ったのは、17世紀フランスの名門貴族、ラ・ロシュフコーだ。嫌われるセレブを見ているとまさにそのとおりだと思う。

例えば、08年と16年の米大統領選で2度も敗れたヒラリー・クリントンは「全て」を持っていた。大統領夫人でありながら自身も弁護士として活躍し、その後上院議員に当選した。オバマ前米政権で国務長官も務めるなど、早くから「女性初の米大統領」の有力候補と目されていた。

それだけでなく、ハンサムな夫とかわいい娘に恵まれ、莫大な富も築いた。夫に女性スキャンダルが絶えなかったのが玉にきずだが、裏返せばそれだけ夫が魅力的ということだろう。

このように全てを持っている女性は、羨望の対象になりやすく、特に同性から嫌われる。昨年不倫疑惑が報じられた山尾志桜里衆院議員が嫌われる一因も、羨望をかき立てることではないか。

「全て」を持っている女性

何しろ山尾氏は、ミュージカル『アニー』で主役を務めた美貌の持ち主だ。その上、東大法学部卒で司法試験に合格。検察官を務めた後、衆議院議員に当選した。国会では待機児童問題について安倍晋三首相を厳しく追及し、一躍名をはせた。民進党結成時には政調会長に抜擢されてもいる。

輝かしいのはキャリアだけではない。東大の同級生と結婚し、かわいい息子にも恵まれた。これだけ何でも持っていたら、不満などなさそうに見える。だが9歳年下のイケメン弁護士との密会が報じられたのだから、夫婦生活がうまくいっていなかったのかもしれない。実際、夫とは離婚協議中で、山尾氏が相談していた弁護士が当の不倫相手だったとも報じられている。

唯一その点では同情に値する。それでも、不倫相手が9歳年下ということに羨望を抱いているオバチャンが私の周囲には多い(私自身も含めて)。

もっとも、羨望は陰湿な感情であり、自分の心の中にあることを誰だって認めたくない。当然、意識化されにくい。そのため、羨望を抱いている人は、「子供がいるのに、不倫なんかしてけしからん」「男と密会していたら、国会議員としての勤めを果たせない」などと正義を振りかざしてたたき、嫌悪感をあらわにする。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

韓国LGエナジー、第1四半期は前年比75%営業減益

ワールド

米、ウクライナに長距離ミサイル供与 既に実戦使用

ワールド

原油先物は下落、米利下げ後ずれによる影響を懸念

ビジネス

香港のビットコイン・イーサ現物ETF、来週取引開始
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 9

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 10

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中