最新記事

メディア

『新潮45』休刊の背景──貧すれば鈍する名門雑誌の最期

2018年9月28日(金)16時00分
古谷経衡(文筆家)

筆者が寄稿した『新潮45』各誌。左より2017年11月号、2015年10月号、2018年10月号(筆者撮影)

極端な二重構造を持った雑誌『新潮45』

月刊論壇誌『新潮45』が休刊した。大変なショックである。かくいう私は、同誌2015年9月号に初寄稿させて頂いて以来、合計8回この雑誌に寄稿させて頂いたことになる。毎回巻頭に近い位置に遇して頂き、表紙にも『古谷経衡』の名前が複数回踊った。

奇しくも最終号となった2018年10月号の表紙にも、『酔っ払った山尾志桜里に罵倒された夜 古谷経衡』が目玉原稿のひとつとして表紙を飾っている。『新潮45』休刊のニュースと合わせて各種メディアで本号の書影が使用される際、かならずちらと私の寄稿タイトルと名前が垣間見えるのがなんとも複雑な心境である。

2015年当時、私は新潮社から既に単著『左翼も右翼もウソばかり』を刊行し、これについて反響が大で増版となったため、同じ版元である『新潮45』の方にも単発で声をかけて頂く状況であった。当時の私にとって『新潮45』は権威と格式のある雑誌で、寄稿の依頼があったのは率直に名誉と感じた。

今回、『新潮45』休刊のニュースを受けてバックナンバーを家の書架から探した。実はちょうど3年前の2015年10月号にも私は寄稿していて、よほど当時の私が嬉しかったのだろう、バックナンバーはすぐさま見つかった(上の写真中央)。

「ヘイト雑誌」「ネトウヨ雑誌」とはほど遠い連載陣

いま振り返ってみると『新潮45』は極端な二重構造を持った雑誌だった。これはどういうことか。

2015年10月現在の連載陣は主要なところで、武田徹(ジャーナリスト)『メディアの運命』、川本三郎(評論家)『男はつらいよ を旅する』、加藤寛(作家)『昭和からの伝言』、佐藤優(作家)『組織で生き抜く極意』、上原善広(ノンフィクション作家)『私大阪』、川上和人(鳥類学者)『鳥類学者の優雅で残酷な日々』、山折哲雄(宗教学者)『日本人よ、ひとり往く生と死を恐れる事なかれ』、里見清一(臨床医師)『日本のビョーキ』、譚ロ美(ノンフィクション作家)『日中百年の群像』ときて、連載漫画では『テルマエロマエ』で一躍大ヒット漫画家となったヤマザキマリの『プリニウス』、連載小説には真山仁の『オペレーションZ』が配置されており、現在、「安倍応援団」「ネット右翼」から蛇蝎のごとく嫌われている石破茂が「人口減少社会問題」についての対談で登場する。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ソロモン諸島の地方選、中国批判の前州首相が再選

ワールド

韓国首相、医学部定員増計画の調整表明 混乱収拾目指

ワールド

イスラエルがイラン攻撃と関係筋、イスファハン上空に

ワールド

ガザで子どもの遺体抱く女性、世界報道写真大賞 ロイ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 4

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 5

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 6

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 10

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中