最新記事

米中関係

貿易戦争の米中がWTOで衝突 経済モデルから中国の国家体制まで激論

2018年7月27日(金)11時37分

7月26日、26日の世界貿易機関(WTO)会合で、米中代表が中国の経済モデルに大きく異なる見解を示し、意見を戦わせた。ジュネーブで26日、WTO会合前に言葉を交わす米国のデニス・シアWTO大使(右)と、中国の張向晨WTO大使(2018年 ロイター/Denis Balibouse)

26日の世界貿易機関(WTO)会合で、米中代表が中国の経済モデルに大きく異なる見解を示し、意見を戦わせた。

米国のデニス・シアWTO大使は「貿易破壊的な中国の経済モデル」と題する文書を提出。「中国は自由貿易や世界貿易システムの忠実な擁護者と繰り返し表現しているが、実際は保護主義や重商主義が世界で最も強力だ」と指摘した。

通商・投資面で国家が主導する中国の手法に伴う害悪は「もはや受忍できない」と訴え、WTOルールの順守を主張するだけでは不十分との認識を示した。

さらに、法律が国家の道具となり、裁判所は共産党の方針に反応する構造と批判。「中国では、経済改革は政府や共産党の経済運営完成や、とりわけ国有企業など政府部門の強化を意味する」と主張した。

これに対し、中国の張向晨WTO大使は、シア氏が中国政府の企業「制御」主張を補強する証拠を示していないと反論した。

ロイターに寄せた声明で張氏は、米国が中国を悪者扱いしようとしているとし、自国の手を縛ることを狙ったルールを中国が受け入れるという見方は幻想だと指摘した。

また、中国の産業政策は「ガイダンス」との位置付けで、国有企業はそれぞれ損益に責任を負う自立した市場主体と説明。一部産業の生産能力過剰要因は国家でなく、金融危機後の世界需要縮小に伴うものとの認識を示した。

米側の文書について、資源配分で果たす市場の「決定的な役割」に触れた箇所を削除しており、中国の政策について誤解を招く形で編集したと批判。「一部脚注では、記載のあった情報源を突き止められなかった」「悪魔は細部に宿る。脚注に欠陥があれば、論拠に疑問を挟む余地が生まれかねない」と訴えた。

[ジュネーブ 26日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

スイス中銀、第1四半期の利益が過去最高 フラン安や

ビジネス

仏エルメス、第1四半期は17%増収 中国好調

ワールド

ロシア凍結資産の利息でウクライナ支援、米提案をG7

ビジネス

北京モーターショー開幕、NEV一色 国内設計のAD
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中