最新記事

通商交渉

貿易戦争でWTOは存亡の危機 外部専門家が公表した報告書で警鐘

2018年7月18日(水)15時29分

7月17日、世界貿易機関(WTO)の信頼性と存続が「深刻な脅威」にさらされている──。外部専門家が公表した報告書で警鐘を鳴らした。写真は2016年、ジュネーブの本部にあるTWOのロゴ(2018年 ロイター/Denis Balibouse)

世界貿易機関(WTO)の信頼性と存続が「深刻な脅威」にさらされている──。外部の専門家が17日公表した報告書で警鐘を鳴らした。

米中両国を中心に世界的に貿易摩擦が強まる中で報告書をまとめたのはドイツのベルテルスマン財団。バーナード・ホークマン氏を筆頭とする14人の専門家が、WTO加盟164カ国は貿易を歪める政策に対処し、多国間のルールに基づく貿易システムを守るため、新たな取り組みを進めることに合意するよう促した。

報告書は「現状維持モードを維持するのは、WTOの緩やかな死につながる。多国間のガバナンスをWTOにおいて再生させよう」と訴え、WTOの信頼性がさらに低下するのを避けるのは喫緊の課題で、それは加盟国が保護貿易的政策を一方的に行使する方向に傾くのを防ぎ、紛争を効果的に解決する道を確保することなどを含むと付け加えた。

WTOのアセベド事務局長は、この報告書について「非常にタイムリーだ」と歓迎する声明を発表した。

報告書は、米政府が安全保障上の懸念から輸入関税や特定製品に割り当て枠を課している点を挙げて「こうした政策は、貿易を歪める政策の報復を呼び、WTO加盟国間で保護主義的措置を講じる際に安全保障を正当化の理由に使うケースが増えると見込まれる点を考えれば、システミックリスクを生み出す」と指摘。またWTOが新たな合意の枠組みに達していないことから、2000年以降で特定国・地域間で相互に優遇措置を供与する貿易協定が400件余りも締結されたと説明した。

その上で「大国も小国も全て、効率的でルールに基づく多国間の貿易システムから大きな利益を得ている」と述べ、これを失わないようにしなければならないと強調した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

IMF委、共同声明出せず 中東・ウクライナ巡り見解

ビジネス

NY外為市場=円・スイスフラン上げ幅縮小、イランが

ビジネス

米P&G、通期コア利益見通し上方修正 堅調な需要や

ワールド

男が焼身自殺か、NY裁判所前 トランプ氏は標的でな
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負ける」と中国政府の公式見解に反する驚きの論考を英誌に寄稿

  • 4

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 5

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 8

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 7

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 8

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 9

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 10

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中