最新記事

アメリカ外交

お騒がせな在独アメリカ大使、着任そうそう大使の送還を求める声

2018年6月13日(水)17時20分
モーゲンスタン陽子

同党議員のロルフ・ミュッツェニッヒも、グラネルが自身を右派勢力の延長とみなし、大使の行動は、外交官がホスト国の政治に関与しないという1961年の「外交関係に関するウィーン条約」に違反するものとしている(DW)。

批判は左派のみにとどまらない。緑の党のフランジスカ・ブラントナーも、トランプ政権は「大西洋間の協力とヨーロッパを内側から破壊するために」全力を尽くしているように見えると語っている。

いったいどんな人物なのか

先週水曜日のドイツ外務省初訪問でいきなり説明を求められることとなったグラネルは、説明要求に対し、発言が意図と違う内容で受け取られ、「右派と関連づけられたくはない」と言っているようだ。また12日には、メルケル首相との対談のために訪独中のオーストリアのクルツ首相を大使館に招待していたが、前日にキャンセルした。

大使は5月に、少数の記者を集めて昼食会を開いたが、そのときに大使自ら、自分はとても一貫性がないと語ったと、シュピーゲルの記者は語る。

イデオロギー的にも、ときにはリベラル、ときにはコンサバティブで、トランプについても同じように、イデオロギー的に一貫性がないと語る。「ドナルド・トランプが予測不可能なのは大きな利点だと思う」と言うが、記者は大使の印象を、率直で現代的、ゲイであることを公表しているけれども、筋金入りの保守だと語っている。ツイートの回数はトランプより多い。

就任後もドイツの政策を公に批判するツイートをして反感を買った。トランプ大統領がグラネルをドイツ大使に指名する話が最初に持ち上がったのは昨年7月のことだったが、就任が数ヶ月遅れたのはアメリカ国内での反発があったからのようだ。そこでも、女性議員を軽視するようなツイートが取りざたされた。

就任1ヶ月も経たないうちにこれだけの波紋を起こした新大使の今後の動向に注目が集まる。

ドイツは2013年、アメリカの情報機関がメルケル首相の携帯電話を盗聴した件で、アメリカ大使を公式に召喚している。また、アメリカ大使がドイツから呼び戻されたのは、1990年の東ドイツおよび東ドイツのアメリカ大使館が消滅した時のみだ。

ドイツ市民の反応

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請5000件減の20.7万件 予想

ビジネス

ECB、インフレ抑制以外の目標設定を 仏大統領 責

ビジネス

訂正-メルセデス、中国パートナーとの提携に投資継続

ビジネス

ホンダ、カナダにEV生産拠点 電池や部材工場含め総
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 7

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中