最新記事

情報セキュリティ

GDPR(EU個人情報保護規則)へ対応取り組み、日本企業は4割強

2018年6月21日(木)11時00分

6月21日、6月ロイター企業調査によると、欧州連合 (EU)が域内の個人データ保護を強化するため5月に施行した「一般データ保護規則(GDPR)」について、影響があるとの回答は2割にとどまった。写真はハッカーコンテストに参加する学生。2013年、ソウルで撮影(2018年 ロイター/Lee Jae Won)

6月ロイター企業調査によると、欧州連合 (EU)が域内の個人データ保護を強化するため5月に施行した「一般データ保護規則(GDPR)」について、影響があるとの回答は2割にとどまった。

ただ世界的なデータ利用の広がりもあり、情報保護規則の更新に取り組んでいる企業は4割強にのぼる。遅れが目立つのはハッカー対策等のシステム強化で、対応済みとしている企業は1割に満たなかった。

この調査は、ロイターが資本金10億円以上の日本の中堅・大企業539社に調査票を発送。6月4日─15日に実施。回答社数は230社程度。

認知不足の企業も

GDPRの規制は欧州での事業のほか、国内で展開する事業でも通販や観光など欧州の顧客との取引が含まれる場合は対象となる。また従業員に欧州出身者がいる場合も適用される。

影響の有無を聞いたところ、「影響がある」は21%、「影響はない」が79%だった。

影響はないとの認識が多数を占める中で、日本企業の間では「まだよく認知できていない」(サービス)、「対策を要する事項が不透明」(非鉄金属)などといった声もあがっている。

しかし、現状で影響がなくとも、GDPRは今後世界標準となる可能性がある。長島・大野・常松法律事務所の森大樹弁護士は「情報データを使ったビジネスを今後発展させていきたいという日本企業は多いと思うが、そうした企業が必ず整理して乗り越えていかないといけないルールのひとつになるだろう」と指摘する。データを扱うビジネスが広がる中で日本企業も十分意識していく必要がありそうだ。

企業の間でも「現時点では影響は軽微と考えるが、今後の波及も考えると積極的な対応を検討している」(ゴム)、「EU関係諸国との取引自体は存在しないが、ビッグデータに日々蓄積される個人情報の保護はいずれ世界中で要請されるだろう」(卸売)など、対応の必要性は認識されている。

業種別にみると、電機では6割近い企業が「影響あり」と回答。機械、輸送用機器、化学などでも3─4割と、影響があると回答する比率が高い。

その他の業種でも「欧州に拠点があるので対応せざるを得ない」(卸売)、「EU域内のグループ会社からデータ移転を受けており、移転が適法と認められるようSCC(データ輸出者と輸入者間の標準的契約条項)を締結した」(不動産)など、事業に関連してすでに対応を進めている企業がある。

「EU域内に拠点はないが、国内外に約500店舗を展開しているため、従業員の個人データに関しては情報保護を慎重に行っている」(サービス)など、社内情報の管理に言及する企業もあった。

一方、新ルールについて「匿名化情報の活用を阻害する事があってはならない」(卸売)との意見も聞かれた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

無視できない大きさの影響なら政策変更もあり得る=円

ビジネス

ECB当局者、6月利下げを明確に支持 その後の見解

ビジネス

米住宅ローン金利7%超え、昨年6月以来最大の上昇=

ビジネス

米ブラックストーン、1─3月期は1%増益 利益が予
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 6

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 9

    ヨルダン王女、イランの無人機5機を撃墜して人類への…

  • 10

    紅麴サプリ問題を「規制緩和」のせいにする大間違い.…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中