最新記事

中国

月の裏側を探査する中国のしたたかな戦略と、戦略なき日本の探査

2018年5月25日(金)18時01分
鳥嶋真也

中国の月探査機「嫦娥三号」Stringe-REUTERS

中国は2018年5月17日、月の裏側に向けて、通信衛星「鵲橋」(しゃくはし、かささぎばし)を打ち上げた

鵲橋は、今年末に打ち上げが予定されている、月の裏側に着陸する探査機「嫦娥四号」と、地球との通信の中継を担う。

中国は2000年代から、着実かつ堅実に、戦略的な月探査を進めている。一方で日本の月探査計画は、長期的な展望に欠け、迷走しつつある。

中国の月探査計画「嫦娥」

中国が進める月探査計画「嫦娥」は1991年から始まり、2007年に初の月探査機「嫦娥一号」を打ち上げ、月のまわりを回りながらの探査に成功。2010年には後継機「嫦娥二号」の探査にも成功している。

2013年には「嫦娥三号」を打ち上げ、月面着陸にも成功。着陸機から無人の探査車を送り出し、月面を走行しての探査も行った。中国はソ連と米国に続く、世界で3番目に月着陸に成功した国となった。

今年末に打ち上げが予定されている「嫦娥四号」は、この嫦娥三号の改良型で、同じく着陸機と探査車からなる。大きく異なるのは着陸場所で、月の表側に着陸した三号とは違い、四号は月の裏側への着陸を目指す。古今東西、月の裏側に着陸した探査機はなく、成功すれば世界初の快挙となる。

月の裏側は表側に比べ、起伏が大きく、また地殻も厚いなど、いくつもの違いがあることがわかっている。その様子を直接地面に触れて探査することで、さらなる違いや、その違いがどうして生まれたのか、そして月の起源の謎についても迫れると期待されている。

ちなみに、月は自転と公転が同期しており、常にある面を地球に向けている。つまりその裏側は決して地球側を向くことはなく、地球から見ることもできない。つまり、そこに降りた探査機は、地球と直接通信することができない。

そこで、今回打ち上げられた鵲橋が、地球と嫦娥四号との通信を中継する役割を担う。

RTX16M1Q.jpg中国の月探査機「嫦娥三号」に搭載された探査車「玉兎号」

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

イランとパキスタン、国連安保理にイスラエルに対する

ワールド

ロシア、国防次官を収賄容疑で拘束 ショイグ国防相の

ワールド

インドネシア中銀、予想外の利上げ 通貨支援へ「先を

ビジネス

超長期中心に日本国債積み増し、利回り1.9%台の3
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 6

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 7

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 8

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 9

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 10

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中