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IT産業が東京都心部に一極集中する理由

2018年5月16日(水)14時10分
舞田敏彦(教育社会学者)

特定地域への集中度がどれほど凄まじいかをグラフにすると、<図2>のようになる。IT産業従事者の数が多い順に242区市町村を並べ、全体に占める割合を累積グラフにした。

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色付きのゾーンは上位20位までの区市町村の占有率だが、IT産業では上位20位の地域が全体の8割を占めている。そこへの集中度は全産業の倍以上だ。

IT産業の場合、事業所はどこに構えてもよさそうなものだが、なぜ中枢部に集中するのか。モレッティによると、高度な知識や発想に触れる機会が多いためだという。イノベーションを担うIT産業従事者には、絶えず一流の知や人と接する必要がある。それはデジタルを介してでも可能だが、やはり直に会う(接する)ことによる効果は大きい。人間はアナログ動物だということなのだろう。

モレッティは「相乗効果」と呼んでいるが、それはいろいろなことに当てはまる。たとえば、低い階層の子弟であっても、高い階層の人間が多い地域に住んでいるならば、大学に行きたいという欲求を高めるだろう。居住地のクライメイトは、当人の家庭環境を凌ぐ影響力を持っている。

日本でも、衰退する製造都市と、勃興の可能性を秘めたイノベーション都市に分化(segregate)していくのではないか。それは、子どもの教育格差が生じる条件にもなる。日本もこの先、「住むところ」が重要な時代になるかもしれない。

<資料:総務省『経済センサス基礎調査』(2014年)

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