最新記事

ヨーロッパ

オーストリアは永世中立、でもロシアが好き

Why Won't Austria Punish Putin?

2018年4月14日(土)16時20分
フランツシュテファン・ガディ(ディプロマット誌シニアエディター)

クルツ首相(左)は今年2月にモスクワでプーチンと会談 Grigory Dukor-REUTERS

<ロシア外交官追放を親ロ派の極右政党が加わる連立政権は断固拒否。オーストリア独自の中立政策の思惑とは>

戦いはほかの者に任せよ、幸いなるオーストリア、なんじは結婚せよ――ハプスブルク家はこの「家訓」を守り、結婚政策によって隆盛を極めた。

第一次大戦後に共和制に移行してからのオーストリアはもちろん、政略結婚を外交政策のツールとすることをやめた。だがこの国の外交は今も多くの面で、帝政時代を継承している。ヨーロッパにおける最近の国際的危機への態度がいい例だ。

EU首脳は3月22~23日に開催された欧州理事会で、ロシアの元情報部員セルゲイ・スクリパリとその娘が神経剤によって襲撃された事件を強く非難した。同月4日に英ソールズベリーで起きた事件の黒幕はロシアとみられている。

欧州理事会は「共通の治安を深刻に脅かされたわれわれは、無条件にイギリスと連帯する」と表明した。その後、EU加盟国18カ国を含む20以上の国がロシア外交官の国外追放を発表。ロシア側も対抗措置として、欧米各国の外交官に国外退去を命じた。

そんななか、イギリスとの連帯に留保を付けたのがEU加盟国のオーストリアだ。中道右派の国民党と極右の自由党による連立政権はこれまでのところ、ロシア外交官の追放といった措置を取ることを拒否している。

そうした対応は親ロシアの自由党の差し金だと、一部の専門家は即座に批判した。だが、オーストリアのセバスティアン・クルツ首相とカリン・クナイスル外相は直ちに反論。東西の「橋渡し役」という伝統的な中立姿勢に基づく決断であり、「ロシアとの対話の手段」を維持する意図があると述べた。

そんな発言は言い逃れにすぎない? いや、早まらずに真剣に受け止めてみるべきだ。オーストリアの曖昧な態度はいら立たしくはあっても、疑わしいとは言えない。

オーストリアは数十年来、ロシアと良好な関係を維持してきた。その大きな要因は第二次大戦直後の歴史にある。

終戦から10年間、オーストリアはイギリス、アメリカ、フランス、ソ連によって分割統治された。主権回復が認められたのは55年。中立国であり続け、外国軍駐留や軍事同盟への加盟を禁じるという条件付きだった。

「どっちつかず」の問題点

その結果として、オーストリアは55年10月に憲法で「永世中立」を宣言した。NATOにも加盟していないが、立場は明らかに欧米寄りで、冷戦当時にはオーストリアの情報機関はアメリカと協力関係にあった。

ニュース速報

ワールド

日米で通商巡り違いあるのは事実=G20で麻生財務相

ワールド

北朝鮮、ICBM実験停止と核実験施設の廃棄を表明

ビジネス

富士フィルムと米ゼロックス、経営統合計画の再交渉目

ビジネス

日産、英工場で数百人削減へ ディーゼル車需要縮小=

MAGAZINE

特集:技能実習生残酷物語

2018-4・24号(4/17発売)

アジアの若者に技術を伝え、労働力不足を解消する制度がなぜ「ブラック現場」を生むようになったのか

人気ランキング

  • 1

    「何かがおかしい...」国のやり方を疑い始めた北朝鮮の人々

  • 2

    「ヒトラーが南米逃亡に使った」はずのナチス高性能潜水艦が見つかる 

  • 3

    アマゾン・エコーが、英会話の練習相手になってくれた

  • 4

    「僕はゲイリー19歳、妻は72歳」 青年が恋に落ちた5…

  • 5

    「家賃は体で」、住宅難の英国で増える「スケベ大家」

  • 6

    米中貿易戦争は中国に不利。習近平もそれを知ってい…

  • 7

    空自F2後継機、米ローキードがF22・35ベースの開発打…

  • 8

    おどろおどろしい溶岩の世界!?木星の北極の正体が…

  • 9

    こんなエコノミーは嫌だ! 合理的すぎる座席で、機…

  • 10

    隕石内のダイヤモンド、太陽系初期に存在した大型原…

  • 1

    「僕はゲイリー19歳、妻は72歳」 青年が恋に落ちた53歳上の女性とは

  • 2

    こんなエコノミーは嫌だ! 合理的すぎる座席で、機内はまるで満員電車?

  • 3

    アメリカの2度目のシリア攻撃は大規模になる

  • 4

    「何かがおかしい...」国のやり方を疑い始めた北朝鮮…

  • 5

    おどろおどろしい溶岩の世界!?木星の北極の正体が…

  • 6

    「家賃は体で」、住宅難の英国で増える「スケベ大家」

  • 7

    「ヒトラーが南米逃亡に使った」はずのナチス高性能…

  • 8

    地球外生命が存在しにくい理由が明らかに――やはり、…

  • 9

    金正恩は「裏切り」にあったか......脱北者をめぐる…

  • 10

    ヒトの器官で最大の器官が新たに発見される

  • 1

    日本の空港スタッフのショッキングな動画が拡散

  • 2

    ユーチューブ銃撃事件の犯人の奇妙な素顔 「ビーガン、ボディビルダー、動物の権利活動家」 

  • 3

    「家賃は体で」、住宅難の英国で増える「スケベ大家」

  • 4

    「金正恩を倒せ!」落書き事件続発に北朝鮮が大慌て

  • 5

    金正恩が習近平の前で大人しくなった...「必死のメモ…

  • 6

    「僕はゲイリー19歳、妻は72歳」 青年が恋に落ちた5…

  • 7

    ヒトの器官で最大の器官が新たに発見される

  • 8

    「パスタは食べても太らない」──カナダ研究

  • 9

    2度見するしかない ハマってしまった動物たちの異様…

  • 10

    金正恩がトランプに懇願か「あの話だけはしないで欲…

グローバル人材を目指す Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ 日本再発見 シーズン2
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版

SPECIAL ISSUE 丸ごと1冊 プーチン

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2018年4月
  • 2018年3月
  • 2018年2月
  • 2018年1月
  • 2017年12月
  • 2017年11月