韓国大統領府「南北会談で終戦宣言の可能性も」 高まる期待に国民は?
朝鮮半島の平和構築のための新ベルリン宣言を発表する文在寅大統領。昨年7月6日ベルリンにて YTN / YouTube
<韓国、そして米国へと、対話攻勢を繰り出す金正恩。朝鮮半島の非核化や米朝国交正常化などが議題になると予想されるなか、朝鮮戦争の「終戦宣言」も含めて課題を一気に解決するのではないかという分析も出てきた>
4月末に予定されている韓国・文在寅(ムン・ジェイン)大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長による南北首脳会談。韓国側では、既にこの歴史的な対話に向けて準備委員会を今週にも発足させ、日程や議題などを北朝鮮側と調整することになった。
韓国メディアのNEWS1などによると、大統領府の関係者が14日記者団に会った際、「南北首脳会談で終戦宣言や平和条約の締結などについて議論することはあるのか?」という記者からの質問に対し、「大統領の昨年7月の新ベルリン宣言やその他の発言からすると、想定範囲内のことだ」と明らかにしたという。
事実、3月5日に文大統領の特使団が北朝鮮を訪問して金委員長と会った際、金委員長が「文大統領の新ベルリン宣言の内容を知っている」と言及したと伝えられており、4月の南北首脳会談がこの内容に沿って議論されるのではないかと推測されている。
この新ベルリン宣言だが、文大統領が2017年のG20ハンブルクサミットの際に、ベルリンを訪問して行った講演で発表したもので、
1)朝鮮半島の平和追求
2)北朝鮮の体制を保障する朝鮮半島非核化の追求
3)恒久的な平和体制の構築
4)朝鮮半島の新経済指導構想推進
5)非政治的交流の協力は政治・軍事的状況とは分離し一貫して持続
という5つの柱からなる。2000年に金大中(キム・デジュン)大統領が発表して、史上初の南北首脳会談を行うきっかけとなった「ベルリン宣言」の精神を受け継ぐものとして、文大統領が提唱したものだ。
文大統領は、この新ベルリン宣言の枠組のうえに、朝鮮半島の平和のために包括的な交渉をするため、朝鮮戦争の終戦宣言と平和体制の構築など、大きな枠組での議論が交わされることが予想されるわけだ。
金根植(キム・グンシク)慶南大学教授は、「文大統領がトランプ米大統領よりも金委員長と先に会って、終戦宣言や平和体制構築のような包括的な内容について対話することで、米朝首脳会談の大きな道筋をつけることができるだろう。先に作っておいた枠組の中にトランプ大統領を囲い込むという狙いもあるようだ」と分析する。
過去、2000年と2007年の2回の南北首脳会談では、南北関係を中心に議論が展開したが、今回は米朝関係改善の扉を開くための呼び水的な性格があるという説明だ。
実際、大統領府の関係者は、「これまでの南北の交渉では、制裁緩和しながら段階的に対話をしてきたが、今回もそうなるとは限らない。複雑に絡み合っている問題の結び目を"ゴルディアスの結び目"のように一刀両断で解決する方向にいくことが可能だ」と説明した。
ただ、一方では北朝鮮が以前にも朝鮮半島の平和を約束しながら、突然、核・ミサイル実験をして態度を変えたことがあるだけに、南北首脳会談で平和体制に対する包括的協議が行われたとしても、それ自体にはなんら意味もないという冷ややかな分析もある。
北朝鮮は2005年、すべての核計画の放棄を約束した6カ国協議共同声明を関係国と共に発表したが、2006年10月に第1次核実験を行った。また2007年にも6カ国協議共同声明を履行すると約束したものの、2009年5月に第2次核実験を実施した。
韓国国防安保フォーラムのムン・グンシク対外協力局長は、「北朝鮮が今一番望んでいるのは制裁緩和だ。終戦宣言のような包括的な問題は米国と相対するということで、南北首脳会談では、経済支援を要求するレベルに落ち着く可能性もある」と話す。