最新記事

米中関係

米中貿易戦争に発展か 習近平がトランプの「炎と怒り」軽視?

2018年1月24日(水)18時36分

1月19日、トランプ米大統領が中国の貿易慣行に対して厳しい措置を講じることを真剣に検討していると、米財界の有力者が同国に警告を発している。だが中国当局者は真に受けておらず、首都北京では危機感がほとんど感じられない。写真はトランプ米大統領夫妻と中国の習近平国家主席夫妻。北京で昨年11月撮影(2018年 ロイター/Jonathan Ernst)

トランプ米大統領が中国の貿易慣行に対して厳しい措置を講じることを真剣に検討していると、米財界の有力者が同国に警告を発している。だが中国当局者は真に受けておらず、首都北京では危機感がほとんど感じられない。

世界の2大経済大国を支配する貿易ダイナミクスを揺るがすのに必要な経済的代償を、米国政府が支払う気などないと、北京にいる専門家の多くは考えている。

両国の貿易関係を巡る懸案としては、中国からのものも含む鉄鋼・アルミニウムの輸入が米国の国家安全保障を損なっているかを調べる調査のほか、輸入される太陽光パネルに関税をかける可能性、中国による知財侵害への調査がある。

「これは中国に取引を求める脅しかもしれない」と、中国の政府系シンクタンク「中国グローバル化研究センター(CCG)」のHe Weiwen上級研究員は話す。

全てとは言わないまでも、こうした調査結果の大半は結論が間近と見られている。トランプ氏は17日、ロイターとのインタビューで、1974年の通商法301条に基づき、知財侵害調査の結果次第では、中国に対して「巨額の罰金」を科すことを検討していると警告していた。

米中間を隔てるこうした認識のギャップは、通商問題を巡る協議が減少していることも一因だと指摘する声が、米財界からは聞こえてくる。その結果生じる空白は、両国が貿易を巡って衝突する可能性を高めている。

「特に経済・通商問題を巡る対話は、以前行われていたものの影や殻、形跡程度のものでしかなくなっている」と、中国高官に時間切れになりつつあると警告するため、北京を最近訪れた米財界代表団に同行したある業界筋はこう語る。

この人物によると、超党派から成る米代表団には、ジョージ・W・ブッシュ政権幹部だったスティーブン・ハドリー氏やカルロス・グティエレス氏ら元米高官が大半を占め、7人いる中国政治局常務委員の1人で副首相の汪洋氏や、エコノミストで習近平国家主席の側近である劉鶴氏ら中国指導部幹部と会談したという。

米代表団は、貿易摩擦が「解消されておらず」、まもなく「重大な措置」が取られる可能性が高いとのメッセージを伝えたと、会談に出席したというこの人物は明かした。

「『お互いに負ける』、『そちらの方がより多くを失う』といった反応を耳にした」と、中国側の受け止めの様子についてこう語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

G7外相会議、ウクライナ問題協議へ ボレル氏「EU

ワールド

名門ケネディ家の多数がバイデン氏支持表明へ、無所属

ビジネス

中国人民銀には追加策の余地、弱い信用需要に対処必要

ビジネス

テスラ、ドイツで派遣社員300人の契約終了 再雇用
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画って必要なの?

  • 3

    【画像】【動画】ヨルダン王室が人類を救う? 慈悲深くも「勇ましい」空軍のサルマ王女

  • 4

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 5

    パリ五輪は、オリンピックの歴史上最悪の悲劇「1972…

  • 6

    人類史上最速の人口減少国・韓国...状況を好転させる…

  • 7

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 8

    ヨルダン王女、イランの無人機5機を撃墜して人類への…

  • 9

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 10

    アメリカ製ドローンはウクライナで役に立たなかった

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 7

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 8

    「もしカップメンだけで生活したら...」生物学者と料…

  • 9

    温泉じゃなく銭湯! 外国人も魅了する銭湯という日本…

  • 10

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    巨匠コンビによる「戦争観が古すぎる」ドラマ『マス…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中