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朝鮮半島

北朝鮮「美女応援団」は平昌五輪に来るのか

2018年1月18日(木)17時00分
ジョン・ハルティワンガー

モランボン楽団の朝鮮労働党創建68周年記念公演 KCNA-REUTERS

<金正恩私設のモランボン楽団は歌う美人将校団。平昌に来たら来たで波乱含みだが>

北朝鮮の「美女応援団」、モランボン(牡丹峰)楽団が2月に韓国の平昌(ピョンチャン)で行われる冬季五輪で世界デビューを果たすかもしれない----南北協議をめぐる報道では、その可能性に熱い注目が集まっている。

15日に始まった北朝鮮の芸術団派遣をめぐる実務協議には、モランボン楽団の楽団長とされる玄松月(ヒヨン・ソンウォル)が出席した。その場で北朝鮮が三池淵(サムジヨン)管弦楽団を派遣することは決まったが、モランボン楽団については北朝鮮側は何も言及しなかった。しかし玄の存在そのものが、モランボン派遣への北朝鮮側の強い意向をうかがわせる。玄はただのお飾りとしてではなく、北朝鮮の次席代表として協議に臨んだからだ。

モランボン楽団は北朝鮮の指導者・金正恩(キム・ジョンウン)の私設楽団として2012年に結成された。北朝鮮の国営メディア・朝鮮中央通信は当時こう伝えている。「敬愛する金正恩元首は新世紀が求めるモランボン楽団を結成された。主体(チュチェ)朝鮮の新世紀が始まる今年、文学芸術分野に劇的な転換をもたらすという壮大な計画によるものだ」ちなみに主体朝鮮とは、1950年代に旧ソ連の影響下からの自立を目指し、当時の指導者・金日成が提唱した主体思想に基づく呼称だ。

モランボン楽団の楽曲には、金正恩を褒めたたえる歌詞が織り込まれている。「あのお方はなぜあれほど優しいのでしょう。あのお方に身を捧げ、温かなお心に抱かれたいと願わずにはいられません」といったものだ。

正式な身分は北朝鮮軍将校

楽団のメンバーは全員、軍の将校の肩書を持ち、軍服を着てステージに立つことも多い。もしも楽団が五輪会期中に韓国で演奏し、この伝統を守るなら、南北間に新たな火種をもたらすことになりそうだ。

「正式には全員軍人である楽団のメンバーが、軍服で韓国に来れば、多くの韓国人は不快感を抱く」韓国の首都ソウルのシンクタンク・世宗研究所のアナリスト、張成昌(チャン・ソンチャン)は英紙ガーディアンにそう語った。「金正恩をたたえたり、演奏中にミサイル発射の映像を流したりすれば、さらに大きな反発を招くだろう」

北朝鮮が派遣するサムジヨン管弦楽団はソウルと五輪会場となる江陵(カンヌン)で1回ずつ公演を行う。

17日には、北朝鮮側が平昌オリンピックに230人の「応援団」を派遣することを表明。「美女応援団」が含まれるのかが注目される。

北朝鮮と韓国は1月9日から南北高官級階段を開始し、北朝鮮の冬季五輪参加で合意。統一旗を掲げた合同入場と女子アイスホッケーで合同チームを結成することが決まっている。米韓は五輪閉幕まで国際的孤立に追い込まれた北朝鮮を挑発しないよう、朝鮮半島近辺での大規模な合同演習を控えることで合意。これを受けて、ほぼ2年ぶりに南北会談が実現した。

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