最新記事

中国経済

中国、地方都市に「特区ブーム」 中央政府が恐れる債務拡大の懸念も

2017年12月19日(火)17時16分

宜興市丁蜀鎮の旧市街地で11月撮影(2017年 ロイター/Christian Shepherd)

長江のほとりの丘陵地帯に広がる中国南部の地方都市・忠県は、当初の計画では「エコシティ」導入による町おこしによって、貧困から脱出するはずだった。

だが土地の権利を巡る地元政府との軋轢(あつれき)から、開発業者が緑をテーマにしたこの計画から撤退。後に残されたものは、建設途中で放棄された建造物と、廃棄物の山だった。

忠県の地元政府はいま、別の経済活性化計画を押し進めている。総工費14億元(約276億円)のオンラインゲーム向け複合施設を建設し、中国で急成長する「eスポーツ」市場で儲けようというのだ。

完成すれば、この施設は6000人を収容できるスタジアムのほか、ゲーム関連スタートアップ企業の支援拠点も併設する。だがこの街には、空港も鉄道駅もない。

人口100万人の多くが低収入に苦しむ忠県は、2020年までに1000の特別地区を設けるという中国政府の呼びかけに応じた多くの都市の1つだ。

中国政府は、内陸地の地元産業を中心とする、持続可能な地方経済を発展させようと計画している。だがその計画により、地方政府が抱えるリスク債務を統制する困難さも浮き彫りになっている。

政府の呼びかけに応えて地方政府が計画した産業振興策の中には、クラウド・コンピューティングや、チョコレート製造、伝統絵画など、さまざまな産業が含まれている。新興産業のほか、伝統産業や、自然環境を生かした観光による振興を目指すものもある。

経済的に遅れた地方の経済成長が、長期的に促される可能性はあるものの、エコノミストは、中央政府が解消しようと努めてきたリスク債務が新たに積み上がり、国内各地で扱いに困る案件が増大する結果を招くことを懸念している。

中国政府の広報官室を兼ねる国務院新聞弁公室は、ファックスによるコメントの求めに応じなかった。

忠県のような特区の多くは、正式認可を受ける前に計画に着手しており、潜在的リスクを拡大させていると、エコノミストは指摘する。

「こうした計画は地方発展を巡る不平等解消に役立つ可能性がある一方で、多くの人が特区ファンドを利用しており、財政的な混乱を招いている」と、中国のシンクタンクである中国グローバル化研究センターのアナリストGao Wei氏は話す。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

アングル:ホームレス化の危機にAIが救いの手、米自

ワールド

アングル:印総選挙、LGBTQ活動家は失望 同性婚

ワールド

北朝鮮、黄海でミサイル発射実験=KCNA

ビジネス

根強いインフレ、金融安定への主要リスク=FRB半期
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32、経済状況が悪くないのに深刻さを増す背景

  • 4

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 5

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 6

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 7

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 8

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 7

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 8

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 9

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中