最新記事

北朝鮮

中国軍駐留で北朝鮮の非核化を

2017年12月7日(木)15時45分
オルトン・フライ(米外交問題評議会名誉研究員)

しかし現在の世界情勢は当時と全く異なる。核拡散防止の原則を守り、そして第三次大戦が勃発するリスクを減らすためなら、中国も朝鮮半島に最小限の兵力を配備することに同意するかもしれない。

とはいえ、「主体(チュチェ)思想」を掲げる北朝鮮がそれを受け入れる保証はない。建国の父・金日成(キム・イルソン)国家主席も、中国に頼らずに朝鮮半島を統一する夢を最後まで捨てなかった。

金日成の北朝鮮は中国のおかげでアメリカの反撃から生き残れたが、金一族は今もこの巨大な隣国に対して複雑な思いを抱いている。中国の支援の必要性を認めながらも、依存する腹立たしさと、手を差し伸べる中国への警戒感が入り交じっている。中国による「再保証」を北朝鮮に受け入れさせるのは不可能ではないが、ひどく難しい。

北朝鮮を説得できるかどうかは中国の肩に懸かっている。アメリカも韓国の不安を打ち消す努力をしなければならない。しかも北朝鮮は、金体制の転覆を狙った陰謀と解釈する可能性がある。そうした疑念を払拭するのは、これまでにないほどの大きな外交課題だろう。

とはいえ、金正恩に核を放棄させる効果的な他の選択肢があるとは思えない。この「再保証」でも北朝鮮が核にこだわるとしたら、それは核武装に「自衛」以外の目的がある証拠かもしれない。いずれにせよ、妙な臆測は無用だ。必要なのは積極的で創造力に富む外交努力。およそ自制ということを知らない核兵器保有国の誕生だけは、何としても防がねばならない。

いかに腹立たしくても北朝鮮の体制存続を保証してやること。誰もが納得できる戦争回避の方法は、それしかないのかもしれない。

From Foreign Policy Magazine

本誌2017年12月12日号[最新号]掲載

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!

気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを

ウイークデーの朝にお届けします。

ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

利上げの可能性、物価上昇継続なら「非常に高い」=日

ワールド

アングル:ホームレス化の危機にAIが救いの手、米自

ワールド

アングル:印総選挙、LGBTQ活動家は失望 同性婚

ワールド

北朝鮮、黄海でミサイル発射実験=KCNA
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32、経済状況が悪くないのに深刻さを増す背景

  • 4

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 7

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 8

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中