全固体電池の「点火」に挑む日特、EV時代生き残り図る部品各社
持ち前のセラミックス技術を活用
全固体電池とは、現在主流のリチウムイオン電池の電解質を可燃性のある液体から固体に変えた電池。リチウムイオン電池は液漏れや発火の恐れがあるのに対し、全固体電池は安全性が高く、大容量・高出力・長寿命などが実現でき、航続距離を延ばすことも可能だ。
全固体電池はトヨタやホンダ<7267.T>、独BMWなどのほか、20年までにEVを発売すると宣言した家電メーカーの英ダイソンも開発中だ。TDK<6762.T>や村田製作所<6981.T>も開発しているが、両社は高い安全性が求められる車用ではなく、モノがインターネットでつながるIoT機器やウェアラブル通信端末向けを想定している。
トヨタが20年代前半の実用化を目指して開発中の全固体電池では、固体電解質に導電性の高い硫化物を用いる。硫化物は水分に触れると毒ガスの硫化水素が発生する。トヨタでは「その問題は解決済み」(同社幹部)としているが、硫化物の安全性を懸念する声もある。
一方、日特は固体電解質に酸化物を使い、硫化物のようなガスを出さない。これまで酸化物では硫化物のように電池を薄くして大きくすることが難しかったが、同社は得意のセラミックス技術を活用して見つけた特殊な物質を酸化物の固体電解質に混ぜることで、硫化物の場合と同じように大型化できることを突き止めた。
同社はTDKが開発した縦4.5ミリ、横3.2ミリの電池よりも大きい10センチ角の電池を開発した。
20年代にはリチウムイオン電池超える性能に
日特の電池の課題は性能に結び付くエネルギー密度の向上だ。小島氏は「全固体電池では、トヨタの電池が最高性能と一般的にいわれており、酸化物系はまだその性能に達していない」と話す。日特は現在のエネルギー密度を公表していないが、開発に携わる研究員の彦坂英昭氏は「まずは20年くらいまでにリチウムイオン電池と同じ性能にし、20年代には超える性能にしたい」という。