最新記事

健康

認知症予防は「万能」オリーブオイルで

2017年7月19日(水)10時00分
ハナ・オズボーン

認知症の予防・治療にオリーブオイルが注目されている STOCKFOOD/GETTY IMAGES

<地中海料理の名脇役オリーブオイルがアルツハイマー対策の主役に。美容にも健康にも効く天然オイルのもう一つの実力>

野菜や果物たっぷり、オリーブオイルに新鮮な魚――。地中海沿岸の伝統料理が健康にいいことは以前から知られている。心臓病や脳卒中のリスクを減らし、認知症のリスクを低下させる効果もあるという。

米神経学会のオンライン学術誌に掲載された論文によれば、米テンプル大学の研究チームは地中海食によく使われるエクストラバージンオリーブオイル(果実を搾って濾過しただけで化学処理を行わない)に注目。認知機能低下を予防し、記憶を保持する仕組みを突き止めた。

研究チームはエクストラバージンオリーブオイルと認知症の関係を調べるため、マウスを使って実験。アルツハイマー病の遺伝子を組み込んだマウスを生後6カ月の時点で2つのグループに分け、片方のグループだけにエクストラバージンオリーブオイルを豊富に含む餌を与えた。この時点ではアルツハイマー病の主な症状(記憶障害や、アミロイドベータというタンパク質が蓄積してできるアミロイド斑など)は現れていなかった。

3カ月後と6カ月後に記憶力と学習能力を調べる認知機能テストを実施したところ、オリーブオイルを与えたマウスのほうがはるかに好成績を上げた。その後マウスの脳組織を調べた結果、著しい違いが見られた。オリーブオイルを与えたマウスはそうでないマウスに比べてアミロイド斑が少なく、ニューロン(神経細胞)の見た目も機能も大きく違っていた。

【参考記事】男性にもある「妊娠適齢期」 精子の老化が子供のオタク化の原因に?

「脳の掃除」効果に期待

シナプス(ニューロン同士の結合部)もオリーブオイルを与えたマウスはよく保たれていて、「オートファジー(自食作用)」も活性化していた。細胞内の不要なタンパク質を分解・再利用するオートファジーは、アミロイド斑など脳内のゴミや有害物質を除去するのに効果的なプロセスで、それが活性化したというのは重要な発見だ。

オートファジーの活動低下はアルツハイマー病発症に関連があるとみられており、それを予防する仕組みを突き止めれば治療法の開発に役立つと研究者らは期待している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

円安は是正必要な水準、介入でトレンド変わるかは疑問

ビジネス

米アップル、ベトナム部品業者への支出拡大に意欲=国

ビジネス

ECBの6月利下げ、インフレ面で後退ないことが前提

ワールド

米国連大使が板門店訪問、北朝鮮擁護やめるよう中ロに
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無能の専門家」の面々

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア…

  • 5

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 6

    キャサリン妃は最高のお手本...すでに「完璧なカーテ…

  • 7

    韓国の春に思うこと、セウォル号事故から10年

  • 8

    中国もトルコもUAEも......米経済制裁の効果で世界が…

  • 9

    中国の「過剰生産」よりも「貯蓄志向」のほうが問題.…

  • 10

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 3

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入、強烈な爆発で「木端微塵」に...ウクライナが映像公開

  • 4

    NewJeans、ILLIT、LE SSERAFIM...... K-POPガールズグ…

  • 5

    ドイツ空軍ユーロファイター、緊迫のバルト海でロシ…

  • 6

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 7

    ロシアの隣りの強権国家までがロシア離れ、「ウクラ…

  • 8

    金価格、今年2倍超に高騰か──スイスの著名ストラテジ…

  • 9

    ドネツク州でロシアが過去最大の「戦車攻撃」を実施…

  • 10

    「もしカップメンだけで生活したら...」生物学者と料…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    巨匠コンビによる「戦争観が古すぎる」ドラマ『マス…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中