最新記事

朝鮮半島

15日の「金日成誕生日」を前に、緊張高まる朝鮮半島

2017年4月14日(金)17時50分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

空母カール・ビンソンなど米軍の攻撃力の展開に北朝鮮は神経を尖らす Erik de Catro-REUTERS

<明日15日に北朝鮮が核実験を行うのではないかという憶測が広がっている。米軍の「先制攻撃」説も報道され、朝鮮半島情勢は予測不能の状況に>

北朝鮮は明日15日、金正恩・朝鮮労働党委員長の祖父にあたる、故・金日成主席の105回目の誕生日を迎える。すでに再度の核実験の準備を完了したと見られる北朝鮮と、新たな挑発に備えて朝鮮半島周辺に攻撃力を展開するアメリカとの間で緊張が高まっている。米メディアからは、米軍の先制攻撃の可能性を伝える報道も出ている。

ジョンズ・ホプキンス大学の研究グループ「38ノース」が衛星写真から分析したところ、北朝鮮で過去4回の核実験が実施された豊渓里(プンゲリ)の核施設で、最近になって「通常にはない頻繁な活動」が確認された。すでに北朝鮮は核実験の準備を完了したものと見られている。

15日は北朝鮮では祝日の「太陽節」とされ、2012年の「生誕100周年」の期間中には、「人工衛星の打ち上げ」名目で弾道ミサイルの発射実験を強行した。このため、北朝鮮がこの15日にも核実験に踏み切るのではないかという観測が関係各国で広がっている。

米軍は、先週シリアを攻撃したものと同じトマホーク巡航ミサイルを北朝鮮に発射できる位置に、駆逐艦2隻を配備しているという。さらに原子力空母カール・ビンソンを中心とする空母打撃群が朝鮮半島に向かっている他、核実験が実施された際に現地の汚染状況を監視する軍用機「WC-135」がすでに沖縄に配備された。

【参考記事】「いま米軍が撃てば金正恩たちは全滅するのに」北朝鮮庶民の本音

北朝鮮は「準備完了」

トランプ政権のレックス・ティラーソン国務長官は、シリア攻撃直後の先週6日、出演したテレビ番組で「いかなる国も、国際的な規範や合意に違反し、他国への脅威となれば、ある時点で対応が取られることになる」と発言し、北朝鮮への自制を求めた。しかしその後、アメリカは朝鮮半島の非核化を望んでいるものの、「政治体制を転換させる目標はない」とも語っている。

北朝鮮は、一連のアメリカの動きに神経を尖らせている。朝鮮労働党の機関紙「労働新聞」は11日、アメリカからの先制攻撃の兆候があれば「核攻撃する」という警告を出した。「我々の核の照準は、韓国と太平洋区域のアメリカの侵略的基地だけでなく、アメリカ本土にも向いている」と、駐留米軍基地やアメリカ本土への核攻撃まで示唆した。

さらに中国も、朝鮮半島の「有事」に備えている。香港に拠点を置く「中国人権民主化運動情報センター」が消息筋の話として伝えた情報によると、中国海軍は合計20隻の潜水艦を朝鮮半島周辺海域に配備した。アメリカと北朝鮮の間で武力衝突が発生した場合、弾道ミサイルを発射できる北朝鮮の「新浦型」潜水艦が出撃する可能性が高く、その行動を追跡・監視するためだと見られる。

米NBCニュースは13日夜、政府関係者の話として、北朝鮮が核実験を実施すると判断した際には、米軍が「先制攻撃に踏み切る」可能性があると報じた。しかしホワイトハウス広報官はこの報道について否定している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏「ウクライナ存続は米にとって重要」、姿勢

ワールド

IMF、中東・北アフリカ成長予想を下方修正 紛争激

ビジネス

米国株式市場=ほぼ横ばい、経済指標や企業決算見極め

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、米指標やFRB高官発言受け
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 6

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 9

    ヨルダン王女、イランの無人機5機を撃墜して人類への…

  • 10

    紅麴サプリ問題を「規制緩和」のせいにする大間違い.…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中