最新記事

憲法

憲法70歳の改憲論議、対立軸は左右より世代間へ

2016年11月12日(土)11時00分
河東哲夫(本誌コラムニスト)

Issei Kato-REUTERS

<来年の解散総選挙後はいよいよ改憲の季節か? 「国の形」づくりに必要なのは野党より若者の声>(写真:日本国憲法の公布から70年の間に世界も社会も激変した)

 11月3日は戦前の明治節、つまり明治天皇の誕生日。今は戦前の記憶を塗り消すべく、「文化の日」となった。そしてもう意識されることも少なくなったが、70年前に日本国憲法が公布された日でもある(施行は半年後の5月3日)。

 今、自民党は先月下旬に行われた2つの衆議院議員補欠選挙で勝利し、民進党は腰が定まらない。となると、1月には解散総選挙という掛け声がいよいよ現実味を帯びる。その後は改憲か? ここで、憲法改正問題を手あかの付いた議論から解放し、広い文脈で考え直してみたい。

 今の日本が直面する課題は、大きく言って2つある。1つはすべての基礎となる日本経済の活力回復。次に、大きく変動してきた日本社会と世界環境に合わせて、国の形(物事の決め方、対米・対中関係の在り方など)を変えていくことだ。

「物事の決め方」とは、自分たちの代表を選んで国会に送り、彼らに法案を審議・採択してもらい、彼らが選んだ首相がそれを実行するという代議制民主主義のことだ。ソーシャルメディアで直接的なコミュニケーションに慣れた若い世代には、この仕組みが何とも古めかしい、嘘っぽいものに見えてしまう。さりとてアメリカのように大統領を直接選ぼうとすると、ムードに流されやすい。

【参考記事】皇室は安倍政権の憲法改正を止められるか

 では、これからどういう仕組みで皆の参加意識を満足させ、かつムードに流されないようにするかが問われる。

 仕組みを変えるには、国の枠組みである憲法も修正しないといけない。日本では、「憲法修正」と一言でも口にすると、野党が飛び付き、「憲法改正は悪。徴兵制につながる」というスローガンで政府を攻撃する。

 だが世界には、ここまで憲法を神格視する国はない。イギリスのように、憲法なしでやっている先進国もある。米憲法には、その228年の歴史の間に27条の修正条項が加えられている。

武装解除ではいられない

 最大の争点とされる戦争放棄条項9条は、マッカーサーの意向を強く反映し、敗戦国日本を未来永劫にわたって武装解除する効果を持つ。日本にとって自虐的で、国際的には異例なものだ。日本のエスタブリッシュメントにとっては、日本の自立性をおとしめる元凶だが、国民にとっては嫌な戦争に引きずり出されないための守り札になっている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

独消費者信頼感指数、5月は3カ月連続改善 所得見通

ワールド

バイデン大統領、マイクロンへの補助金発表へ 最大6

ワールド

米国務長官、上海市トップと会談 「公平な競争の場を

ビジネス

英バークレイズ、第1四半期は12%減益 トレーディ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中