最新記事

カルチャー

恐怖、不安、自己認識──この世界の境界はどこに? 話題作 『ボーダー』主演女優インタビュー

Smelling Fear and Anxiety

2019年10月28日(月)12時35分
ニューズウィーク日本版編集部

ティーナがヴォーレに感じたにおいの正体が徐々に明らかに ©META_SPARK&KÄRNFILM_AB_2018

<肉体改造と大胆な特殊メークで大変身。 『ボーダー』主演女優の演技が観客を異次元に導く>

恐怖や不安を嗅ぎ分けられるとしたら、どうだろう。ヨン・アイビテ・リンドクビストの短編小説を基にしたアリ・アッバシ監督の『ボーダー 二つの世界』は、そんな世界が垣間見える作品だ。

スウェーデンの税関職員ティーナ(エバ・メランデル)は違法な持ち込み品や、道徳的腐敗を嗅ぎ分ける特殊な能力を持っている。ある日、旅行者のヴォーレ(エーロ・ミロノフ)を呼び止めるが、いつもの直感が外れてしまう。やがてティーナは 彼を自宅に招き、離れを宿泊先として提供。自分とヴォーレについての大きな秘密を知るようになっていく──。

『ボーダー』は北欧の神話をべースにした物語だが、自己認識というテーマにも重点を置いている。メランデルが繊細に演じるティーナに観客は心を開き、時に笑い、時に涙を流す。2018年のカンヌ国際映画祭「ある視点」部門のグランプリ受賞などでも話題になった作品だ。

特殊メークで大変身してティーナ役に挑んだメランデルに、本誌マリア・ブルタジオが話を聞いた。

――ティーナ役を演じるに当たってどんな準備をしたのか。

週4回のボディービルディングで腰から肩にかけて筋肉をつけ、体重を18キロ増やした。冷蔵庫に食事のスケジュール表を張って、90分に1度は食べていた。

短期間で急激に体重を増やすのはある意味、体を毒するようなものでとても大変だった。運動はしなかった。

――心理面では?

半分動物で半分人間のようなイメージトレーニングをした。特殊な嗅覚を持つ役柄だから、YouTubeで犬の動画を見 て、どんなふうに鼻をくんくんさせ、においを嗅いだりするのかを観察したりもした。

――特殊メークは大変だった?

人工装具を9つも着けた。まぶたにまで! 特殊メークをしていないのは唇だけという状態だった。

最高に桁外れの変身でわくわくしたけど、かなり大変でもあった。毎回、4時間かけて特殊メークをして、10時間の撮影に臨み、終わったらメークを落とすのにまた1時間かかる。精神的にも肉体的にも、この役をやるのは大きな重圧だった。

【参考記事】社会は女性を信じるか──34年前と変わらない、21世紀の現実

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米国防長官、中東の安定強調 イスラエルなどと電話協

ビジネス

中独は共通基盤模索すべき、習主席がショルツ首相に表

ビジネス

中国GDP、第1四半期は前年比5.3%増で予想上回

ワールド

米下院、ウクライナ・イスラエル支援を別個に審議へ
今、あなたにオススメ

RANKING

  • 1

    キャサリン妃とメーガン妃の「本当の仲」はどうだっ…

  • 2

    「結婚に反対」だった?...カミラ夫人とエリザベス女…

  • 3

    エリザベス女王が「誰にも言えなかった」...メーガン…

  • 4

    「テニスボール貫通ピンヒール」の衝撃...ゼンデイヤ…

  • 5

    やはり「泣かせた」のはキャサリン妃でなく、メーガ…

  • 1

    キャサリン妃とメーガン妃の「本当の仲」はどうだっ…

  • 2

    女性の胎内で育てる必要はなくなる? ロボットが胚…

  • 3

    「結婚に反対」だった?...カミラ夫人とエリザベス女…

  • 4

    エリザベス女王が「誰にも言えなかった」...メーガン…

  • 5

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 1

    キャサリン妃とウィリアム皇太子の「ご友人」...ロー…

  • 2

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 3

    メーガン妃がついに「成功の波」に乗った!?...「追い…

  • 4

    メーガン妃は「努力を感じさせない魅力がお見事」とS…

  • 5

    英国でビーガンが急増、しかし関係者からも衝撃的な…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:老人極貧社会 韓国

特集:老人極貧社会 韓国

2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる