シニア犬をテーマにした体験型ドッグカフェ:犬と人が幸せになれる高齢化社会とは
「シニアだからこそおいで」という場所に
これまでに2頭の愛犬を見送っている中村さんは、「犬は亡くなる直前に必ず感謝の気持ちを伝えてくる」と言う。「1頭は保護犬でした。その子はしっぽを振ったことがなかったのですが、最期にすごく振ってくれて、号泣してしまいました。もう1頭は最後の2日間は意識がなかったのですが、旅立つ瞬間に意識が戻って、私の顔をじっと見てから亡くなりました。犬にも感謝を伝えるタイミングが必要なんだと思います。飼い主としても、それがあって初めてお別れできるし、気持ちの整理ができるのでしょう」
容態が悪化した愛犬を一縷の望みを託して入院させ、出張とも重なって最期を看取ることができなかった筆者にとっては、重い言葉だ。同じような後悔を抱える飼い主を増やさないためにも、シニア犬に関する情報交換や、経験者との交流の場は必要だと思う。
「19歳、20歳まで生きた犬の中には『毎日行きつけのカフェに行って人と触れ合っていました』という子も多いんです。年老いても、近所に出かけるなどして毎日刺激を与えてあげるのが大切だと思います。だから、シニア犬と飼い主さんが安心して来られるような、『シニアだからこそおいで』という場所にしたいとい思います」(中村さん)
最愛の『マメ』に捧げる
この原稿、ここまで書いた段階でいったん入稿したのだが、付け加えなければいけないことが起きてしまった。
先に我が家でも要介護犬を抱えていると書いたが、そのフレンチ・ブルドッグのマメ(15歳メス)が、僕がこの原稿を書き終えて自宅に帰った直前に亡くなってしまった。マメが一番なついていた妻がつきっきりだったので、一人寂しく逝かせることにはならなかったが、僕はまた、前の犬を病院で一人逝かせてしまったことをあれだけ後悔したのに、マメを見送ることができなかった。
でも、不思議と前の時ほどは胸が張り裂けるような思いはない。フェードアウトするような緩やかな弱り方から最期を迎えたこともあるが、僕はすぐに、犬は最期に何らかの形で飼い主に感謝の気持ちを伝えるという、中村さんの持論に思いを馳せた。
マメが、僕がまさにシニア犬との暮らしとお別れをテーマにしたこの記事を世に出そうとしているその瞬間に旅立ったのは、あまりにもできすぎた偶然だ。僕が犬の記事を書いたり写真を撮る仕事をライフワークにしているのを、知っていたわけではないだろう。でも、マメは、こうして皆さんに、このタイミングで、この内容の記事の中で報告するという、最も僕らしい形でお別れを言う機会を与えてくれた。
そうに違いないから、この記事をマメに捧げます。ありがとう、マメ!